2019 Fiscal Year Research-status Report
腸管NAMPT-NAD合成系を標的としたNMNによるインスリン抵抗性予防法の開発
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18K15399
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山口 慎太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (50464855)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腸管 / NAMPT-NAD+合成系 / インスリン初期分泌不全 / インクレチン / NMN |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類NAD+合成系の鍵酵素であるNAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase)は環境・栄養状態に応答することでNAD+量を調節し、サーチュインに代表されるNAD+消費酵素を介して代謝疾患などにおいて重要な役割を果たすことが明らかにされてきた。さらに、インスリン抵抗性などにおいてNAMPTの酵素反応産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)や、NR(nicotinamide riboside)などのNAD+中間代謝産物がNAD+量を増加させ、病態を改善することも報告されている。 近年、加齢に伴い腸管のNAD+量が低下すること、また小腸にNMNのトランスポーターが存在することが報告され、平成30年度より腸管NAMPT-NAD+合成系の糖代謝およびインスリン抵抗性発症制御における役割を検討することを目標に研究を行っている。 具体的には、高脂肪食負荷による全身のインスリン抵抗性発症の過程で、腸管Nampt発現低下が、極めて早期から生じることを見出し、その意義を検討するため、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウトマウスを作成した。通常食投与では、コントロール群と比較し、エネルギー代謝には有意な差を認めなかった。腹腔内および経口ブドウ糖負荷試験では、経口ブドウ糖負荷試験においてのみ、ノックアウト群で有意な血糖値の上昇を認めた。機序の1つとして、インスリンの初期分泌不全が関与することを示唆する所見を得た。現在はその機序を腸管のNAMPT-NAD+合成系によるインクレチンの合成・分泌制御という観点から検討を行っている。 本研究により、加齢および肥満に伴う、インスリンの初期分泌不全さらにはインスリン抵抗性発症における腸管NAMPT-NAD+合成系の意義を明らかとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C57BL/6Jマウスへの高脂肪食負荷時の腸管およびその他の代謝臓器のNampt発現量の経時的変化の結果をもとに、Nampt-floxed マウスと、腸管上皮細胞で Cre を発現する Villin-Cre (Vil-Cre)マウスを用いて、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウト(Intestinal epithelial cells-specific Nampt knockout: INKO)マウスの作成に成功した。 INKOマウスを用いて、腸管NAMPT-NAD合成系の糖代謝制御における意義の検討を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに腸管上皮細胞特異的Namptノックアウト(Intestinal epithelial cells-specific Nampt knockout:INKO)マウスの作成に成功した。さらに、INKOマウスを用いて、腸管上皮細胞でのNAD+の枯渇が、全身の糖代謝障害やインスリン抵抗性発症を制御するかの検討を行った。具体的には、腹腔内インスリン負荷試験、腹腔内ブドウ糖負荷試験、経口ブドウ糖負荷試験により、INKOマウスではインスリン抵抗性を呈さないものの、経口ブドウ糖負荷試験ではコントロール群と比較し、血糖値の上昇を認めた。その機序として、インスリン初期分泌不全の存在を示唆する結果を得た。 上記の結果をもとに、本年度は、経口ブドウ糖負荷試験時の、インスリン・インクレチン分泌の経時的変化を詳細に評価し、経口ブドウ糖負荷試験時の血糖上昇の機序を明確にする。 そして、経口ブドウ糖負荷試験でのINKOマウスでの血糖値上昇が、腸管のNAD+量依存性であるかを検討すべく、NAD+中間代謝産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)をINKOマウスに経口投与する。腸管上皮細胞のNAD+量の回復により、インクレチン・インスリン分泌は上昇するか、血糖値が改善するかを評価する。 最終的には、細胞培養系を用いて、腸管NAMPT-NAD+合成系によるインクレチン合成・分泌機序の解明を、NAD+依存性脱アセチル化酵素サーチュインの関与を想定し行う。
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Causes of Carryover |
2019年度までに購入予定であったNMNを本年度購入することが最大の要因である。2019年度までに、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウトマウスの表現型を確認し、さらにpilot studyを行うことで、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウトマウスの腸管上皮細胞NAD+量を回復するに十分なNMNの投与期間・投与量の検討を行った。上記結果をもとに、必要なマウス数・NMN量の詳細な検討をすすめ、本年後にNMNを購入することとした。
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Research Products
(3 results)