2019 Fiscal Year Research-status Report
Clinical study of anti-IgLON5 autoantibody related disorders
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18K15445
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
木村 暁夫 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00362161)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | IgLON5 / 自己抗体 / 大脳皮質基底核症候群 / タウオパチー |
Outline of Annual Research Achievements |
抗IgLON5抗体関連疾患は、特異的な睡眠障害、脳幹症状、歩行時不安定性、舞踏運動、筋強剛などを呈するが、これらの症状は進行性核上性麻痺(PSP)や多系統萎縮症(MSA)に類似する。本年度、パーキンソン病(PD)およびパーキンソン関連疾患と臨床診断されている患者の中に抗IgLON5抗体陽性患者が、存在する可能性を考慮し、IgLON5を特異的に発現させたHEK293細胞を用いて行うCell-based assayにより、PD 60名、MSA 49名、PSP 52名、大脳皮質基底核症候群(CBS)19名、不随意運動症17名、脳炎・脳症124名の血清を用い抗IgLON5抗体を検索した。その結果、Armstrongの診断基準でprobable CBDと診断した85歳女性患者より抗IgLON5抗体を検出した。本患者は、約4年の経過で緩徐に進行する歩行障害をきたし、四肢筋強剛、左半身の失行、左下肢ジストニア、皮質性感覚障害を認めた。軽度の不眠と閉塞性睡眠時無呼吸を認めたが、明らかな脳幹症状は認めなかった。髄液細胞増多はなく、頭部MRIで右大脳半球優位の脳萎縮、脳血流シンチで右優位の血流低下、Dopamine transporter (DAT)シンチで右優位に両側線条体の集積低下を認めた。大量免疫グロブリン静注療法(IVIg)により、左半身の失行、歩行障害が改善し、脳血流シンチ、DATシンチ所見でも改善を認めた。以上、CBSの臨床表現型を呈した抗IgLON5抗体陽性患者として、世界で初めて報告した(Mov Disord Clin Pract. 2020. In press)。その他の患者では抗IgLON5抗体は検出されなかった。今回の結果は、免疫療法に反応する可能性がある非定型パーキンソニズムの鑑別疾患として、抗IgLON5抗体関連疾患を考慮する必要があることを示す重要な知見と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本邦で初めてCell-based assayによる抗IgLON5抗体の測定系を確立し、PD 60名、パーキンソン関連疾患120名、原因不明の不随意運動症17名、脳炎・脳症124名の合計321名の血清を用いて、抗IgLON5抗体の測定を行った。これは、当初の目標であった200名を上回るものであり、目標は達成していると考える。また、この内の1名の,臨床的にCBS (国際診断基準のprobable CBD)と診断された患者において抗IgLON5抗体を検出し、論文として発表した。これは、抗IgLON5抗体関連疾患が、これまでに報告のあったPSP類似の臨床症状を呈するだけでなく、同じタウオパチーでもあるCBSの臨床病型をとることがあり、免疫療法が有効であることを世界で初めて明らかにしたものであり、同疾患の臨床スペクトラムの多様性と免疫療法が有効なCBS患者がいることを示す重要な報告と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、抗IgLON5抗体関連疾患の臨床スペクトラムを明らかにすることを目的として、さらに多数の神経疾患を対象として抗IgLON5抗体の検索を行う。具体的には、MSA, PSP, CBS, PDに加え新たに、その他のタウオパチーとしてfrontotemporal dementia (FTD)、原因不明の不随意運動症や睡眠障害患者も対象とする。それぞれの患者血清を用いた、抗IgLON5抗体の検索を、他施設共同研究として行う予定である。また、本年度抗IgLON5抗体が陽性であった患者の血清を用いて、抗IgLON5抗体の機能解析を行うことにより、抗IgLON5抗体とタウ病理との関連性を検討する予定である。さらに、これまでに我々は、抗IgLON5抗体以外にも当科においてMSA, PSP, CBS, PDと臨床診断された一部の患者において、ニューロンに反応する抗神経抗体が血清中に存在することを、ラット大脳凍結切片を用いた免疫組織学的検討により確認している。本年度は、これらの抗神経抗体の標的抗原の同定と特異性の検討も行う予定である。
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