2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of progressive pathology using PD-1 positive T cells in multiple sclerosis
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18K15453
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
千原 典夫 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (70781821)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / PD-1 / 共抑制性受容体 / 共抑制性遺伝子プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)は中枢神経内に多発性の炎症性病変を生じる疾患で、臨床的には永年にわたって再発と寛解を繰り返すが、徐々に神経変性が進行して車椅子生活を余儀なくされる例も稀ではない。一方で長期間疾患修飾薬が奏功する良性MS例があり、例えばinterferonβ(IFNβ)治療で効果が得られた例はレスポンダーとして10年を超えて安定した経過をとる。進行性MSと良性MSの違いを解明することが肝心だが、経時的な組織変化を観察することは難しく、変化する免疫病態の核心に迫るためには何らかの鋳型モデルが必要である。本研究を進めるにあたって、申請者は腫瘍微小環境でProgrammed Death 1(PD-1)をはじめとした複数の共抑制性受容体を発現し機能不全に陥っている疲弊T細胞に発現する遺伝子群に注目し、免疫寛容など他のT細胞機能不全とも共通する共抑制性遺伝子プログラム(coiGP)を同定し報告した。このことから本来、組織からの抑制性シグナルを受けたT細胞は疲弊T細胞様の細胞となるはずだが、MSにおいてはその分化過程が何らかの形で不完全なものとなるため慢性的な炎症が持続し神経障害を引きおこす可能性があるのではないかと考えた。実際MS患者のステロイド治療反応性が良好な群では髄液CD8陽性T細胞のPD-1陽性の割合が多く、逆に治療後も神経障害の後遺症状を残した群ではPD-1陽性の割合が低下することを発見した。実際治療によって寛解を得られた患者由来のPD-1陽性CD8陽性T細胞は共培養した他のT細胞分裂を抑制し、その遺伝子発現解析ではcoiGPに含まれる他の共抑制性受容体を発現していた。今後、他のT細胞機能不全状態との共通性や相違性について解析を加えてゆき、免疫性神経疾患全般に応用可能な抑制性遺伝子プログラム同定を目指す。
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