2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel therapeutic approach and realization of personalized medicine in multiple sclerosis
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18K15473
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 公俊 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (10807093)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / 個別化治療 / T細胞 / 血液浄化療法 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の自己免疫疾患である。生涯にわたって神経障害が蓄積する難治性疾患であるが、病態に多様性があり、最適な治療法の選択が難しい。実際に、MSの治療として血液浄化療法が施行されるが、無効例が存在し、事前の効果予測は困難である。本研究では、個別化医療実現のためのバイオマーカー同定、ならびに新規治療標的同定を目指している。 2018年度は、免疫吸着療法を施行した症例について解析を行った。MS病態では、T細胞が中心的な役割を担うとされており、治療前後に、末梢血中のヘルパーT細胞(Th細胞)の頻度を解析した。解析対象とした21例中12例で、治療効果を認めた(responder)。Th細胞のうち、病原性を持つとされるTh1細胞頻度は、responder群で有意に高値であった。また、治療直前のTh1細胞頻度に基づいて、治療効果が高精度に予測できることが示唆された(ROC曲線でのArea under the curve (AUC): 0.95)。この成果については、特許を出願済である。治療前後では、Th1細胞頻度に変化を認めなかったが、Th1細胞の機能に重要な遺伝子の発現低下を認めた。すなわち、Th1優位の病態をもつ患者では、Th1細胞の機能変化を通して、免疫吸着療法が効果を示すことが示唆された。他に、responderとnon responderにおける末梢血エクソソーム中のmiRNAを、マイクロアレイを用いて解析し、両者を識別するような候補miRNAを見出した。また、血液中の他の液性因子の解析も行い、免疫グロブリン以外に、治療前後で変化する4つの物質を同定した。 これらの成果を応用することで、今後、MSの個別化医療が可能になると期待される。また、詳細な解析を進めることで、MSにおける病態の多様性解明や新規治療標的の同定につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、本研究計画の初年度として、主にMSの個別化医療実現のためのマーカー同定を目指して研究を行った。これまで、MSの免疫吸着療法においては、無効例が存在するものの、事前の治療効果予測は困難であった。これまでの研究成果により、血中のTh1細胞の頻度によって、この治療効果を高精度に予測できることが示唆された。さらに詳細な解析を進めることで、臨床応用の可能なバイオマーカーとして確立されると考えられる。この成果については、特許を出願済である。これまでの画一的治療では、疾患の多様性があるために、不利益を受ける患者が一定数存在したが、そうした状況を改善する個別化医療につながるものと期待される。また、Th1細胞以外にも、バイオマーカーの候補になるような、エクソソーム内miRNAを同定している。また、エクソソームやエクソソーム内miRNAをターゲットとした治療法開発についても、MSモデルであるEAEマウスを用いて、順調に解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、これまでの研究成果として、末梢血中のTh1細胞頻度によって、MSにおける血液浄化療法の治療効果が予測できることが示唆された。今後は、この背景機序について解析を進める。具体的には、末梢血中のTh1細胞について、治療前後での機能的変化を解析する。また、その変化に関連した、エクソソーム内miRNAを含めた液性因子の同定を目指す。また、T細胞以外のリンパ球サブセットについても、詳細な解析を進める。また、前述のように、エクソソームやエクソソーム内miRNAをターゲットとした治療法開発についても、MSモデルであるEAEマウスを用いて、解析を継続する。こうした研究により、最終的に、個別化医療のためのバイオマーカー確立とともに、新規治療標的の同定につながることが期待される。
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Causes of Carryover |
2018年度は、MSの個別化医療実現や新規治療標的同定のための足掛かりとなる実験を重ね、主にフローサイトメトリーや遺伝子発現に関する消耗物品の購入を行った。個別の金額は比較的少額であった。その成果として、有望なリンパ球サブセットを同定しており、今後はex vivo, in vitroを中心に、網羅的解析を進める方針である。フローサイトメトリーや遺伝子発現に関する消耗物品の他、比較的高額なアレイ等の実験も進める方針としており、繰り越し分が合算された予算が必要と考えている。
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Research Products
(11 results)