2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢発症の気分障害におけるゲノム・エピゲノム要因の検討
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18K15486
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菅原 裕子 熊本大学, 熊本大学病院, 助教 (90610692)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高齢者 / 気分障害 / エピゲノム / SLC6A4 / HTTLPR |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢健常者の末梢血由来DNAを用いてセロトニントランスポーター(SLC6A4)遺伝子のプロモーター領域に存在する多型(HTTLPR)の詳細なジェノタイピング、パイロシークエンス法によるSLC6A4遺伝子のDNAメチル化レベルの測定を行い、抑うつ症状・気質との関連を調べる。高齢発症の気分障害患者の末梢血由来DNAを用いて同様に解析を行い、高齢健常者と高齢発症の気分障害患者におけるSLC6A4遺伝子のゲノム・エピゲノム関連解析を行う。SLC6A4遺伝子のDNAメチル化変化に応じて、高齢発症の気分障害患者をSLC6A4高メチル化群と低メチル化群に分け、ゲノムワイドなDNAメチル化解析を行い、メチローム差異に基づき高齢発症の気分障害患者における異種性について検討する。さらに、潜在性の双極性障害である可能性が考えられるSLC6A4高メチル化群においてバイオマーカーの抽出を試みる。 これまでに、遺伝子解析に関する同意を得られた高齢健常者1533名の末梢血からDNAを抽出し、HTTLPRの詳細なgenotypingを行った。新規多型が同定された6名を解析対象から除外し、HTTLPRの典型的な分類法であるS/S, S/L, L/Lの3群間において、年齢と性別を考慮した上で抑うつ症状(geriatric depression scale: GDS)に関して分散分析を行った結果、群間に有意差は認められなかった(p=0.82)。日本人集団で頻度の高いLタイプである16-C, 16-Dのプロモーター活性はSタイプと同等であることから、16-C, 16-DをSタイプに分類し、S/S, S/L, L/Lの3群間において同様に分散分析を行った場合も、有意差は認められなかった(p=0.73)。これらの結果は、GDSがカットオフ値6以上の抑うつ症状が認められた高齢者のみを対象とした場合も同様であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多数例の高齢健常者におけるHTTLPRの詳細なgenotypingを行うため、ハイスループットなgenotyping法の確立に時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、高齢健常者と高齢者気分障害患者のIllumina社のHumanMethylationEPIC BeadChipを用いたゲノムワイドなDNAメチル化データを取得済みであり、解析中である。 また、多数例の高齢健常者について、パイロシークエンス法を用いて個々のSLC6A4遺伝子のDNAメチル化レベルを測定し、コホート研究で測定される様々な交絡因子を考慮に入れ、抑うつ症状・気質とHTTLPR・SLC6A4遺伝子のDNAメチル化レベルの各関連について検討を行っていく。 さらに、高齢発症の気分障害患者についても同様にHTTLPRの同定、SLC6A4 DNAメチル化レベルの測定を行い、HTTLPRの影響を考慮した上でSLC6A4のDNAメチル化レベルについて年齢・性別をマッチさせた健常者と高齢発症の気分障害患者とで比較・検討を行う。
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Causes of Carryover |
多数例の高齢健常者におけるHTTLPRの詳細なgenotypingを行うため、ハイスループットなgenotyping法の確立に時間を要し、進捗状況にやや遅れが生じているため。
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