2019 Fiscal Year Research-status Report
22q11.2欠失症候群患者における薬剤性パーキンソニズムの発症機序解明
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18K15489
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
林 岳宏 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (40747151)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬剤性パーキンソニズム / 22q11.2欠失症候群 / 抗精神病薬 / 統合失調症 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
22q11.2欠失症候群は、ヒト第22番染色体長腕11.2の微細欠失を原因とする症候群であり、身体奇形症候群に加え高率に統合失調症症状を呈する。統合失調症症状を呈した同症候群患者の治療においては、統合失調症患者の治療と同様に、神経伝達物質ドパミンに拮抗作用のある抗精神病薬の有効性が確かめられている。有害事象としてパーキンソニズムが問題になるが、その程度には個体差がある。一方で、22q11.2欠失症候群患者の欠失部位には、個人差があることが知られている。本研究では、22q11.2欠失症候群患者の遺伝子変異解析を通して、薬剤性パーキンソニズムにおける個体差発生機構の解明を試みることを目的とする。具体的には、統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者を対象に、欠失部位を中心にリシークエンシングおよびコピー数変異解析を行う。顕著な薬剤性パーキンソニズムのある患者に特異的に認めた遺伝子変異については、統合失調症患者においてもその遺伝子変異の有無を検討する。申請者は、統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者及び、健常人と抗精神病薬服用中の統合失調症患者からの採血とDNA抽出を部分的に終え、欠失部位の遺伝子に関するリシークエンシング解析と変異の有無の検討を行っている。しかし、未だ特異な変異の発見には至っていない。今後は、更なるDNAサンプルの収集と共に、Taqman probe を用いた定量的PCR 法により、CNV 解析を含めた変異解析も行う予定である。臨床的な経過や症状を再度見直し、22q11.2欠失症候群の患者で、薬剤性パーキンソニズムが顕著であった患者とそうでなかった患者由来のリンパ芽球細胞株を樹立し、タンパク質の発現変化について解析を行うことも計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請者は、統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者及び、健常人と抗精神病薬服用中の統合失調症患者からの採血とDNA抽出を部分的に終え、欠失部位の遺伝子に関するリシークエンシング解析と変異の有無の検討を行っている。しかし、未だ特異な変異の発見には至っていない。解析には、多大な労力と時間がかかっている。統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者をサンプル対象と設定しているが、多様な表現型を考慮すると、さらにサンプルを収集する必要があり、研究計画の一部の見直す必要が生じた。そのため、研究の実施は当初の計画に比べて遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、更なるDNAサンプルの収集を行いつつ、遺伝子の解析を進めていく。統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群患者において、次世代シークエンシング技術を用いて、全ゲノム解析を行うことを計画している。欠失領域においては、Taqman probeを用いた定量的PCR法により、欠失した遺伝子群を同定することも計画している。また、22q11.2欠失症候群の患者で、薬剤性パーキンソニズムが顕著であった患者とそうでなかった患者由来のリンパ芽球細胞株を樹立し、タンパク質の発現変化について解析を行うことを計画している。それによって、多数の遺伝子で変異が認められた場合でも、薬剤性パーキンソニズムの発生に強く影響を及ぼす遺伝子群の同定が可能になると考えている。同定された変異を挿入したベクターをトランスフェクションし過剰発現させた細胞モデルを作製し、PC12細胞を用いてドパミン放出能・アセチルコリン放出能を測定し、特定された変異が機能にどのように影響を与えているかを確認することを考えている。
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