2018 Fiscal Year Research-status Report
うつ病の発症メカニズムの解明-リアノジン受容体およびIP3受容体の関与
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18K15500
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
丸山 恵美 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30792072)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リアノジン受容体 / ダントロレン / Ca2+ / 海馬 |
Outline of Annual Research Achievements |
うつ様状態でのリアノジン受容体(RyRs)およびIP3受容体(IP3R)の発現量を確認するために、拘束水浸ストレス負荷にてうつ様モデルマウスを作成し、ウェスタンブロット法にて海馬でのタンパク発現量を調べた。結果、うつ様状態ではRyRsのタンパク量の増加が確認され、IP3Rでは見られなかった。そしてこの増加は電気けいれんショック(ECS)によるうつ症状の改善とともに減少した。一方RT-PCR法によるmRNAの測定はいずれも変化がなかった。次にこのモデルマウスに対してRyRsのアンタゴニストであるダントロレンの投与実験を行い、RyRsの機能抑制がうつ様状態に与える影響を調べた。すると投与量に依存してうつ様症状の増悪が確認された。また、ダントロレンの前投与によってRyRsをブロックした状態でECSを施すとうつ様改善効果が減弱された。これらの結果はうつ病の発症および改善にRyRsが何らかの関与があることを示す。 うつ状態でRyRsのタンパク発現量が増大するにもかかわらずブロックするとうつ症状が増悪することから、RyRsのCa2+放出能の変化の有無を検討する必要がある。よってCa2+イメージング測定用のシステムを構築し、RyRsのうつ様状態での機能評価を行うこととした。 新規に構築したため予備実験として正常マウスを用いた海馬スライスの作成方法およびCa2+感受性色素であるOregon green 488 BAPTA-1 AM導入後のCa2+放出による蛍光強度の変化の測定方法を検討した。 海馬歯状回ではRyRsの刺激薬であるcaffeineを灌流液中に注加することで輝度が約1.4倍に増強する細胞など多くのcaffeine感受性細胞を記録・解析することができた。しかしCA1およびCA3領域では明確な細胞活動がほとんど記録できなかったため今後シナプス層での記録を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
うつ様モデルマウスを用いた実験計画の中で、2)RyRsおよびIP3Rの発現量の検討、3)アンタゴニストの投与実験についてはおおむね結果がまとまった。5)Ca2+イメージングによる機能評価のためのシステムの構築をするに当たり、顕微鏡やカメラは順調にセットできたが、細かいパーツ(灌流用チャンバー、チューブ、スライスアンカー、灌流装置、廃液システムなど)の納品が海外メーカー都合により必ず一ヶ月以上かかるため、改良点が発生するたびに実験が滞ったが、なんとか初年度に構築を完了させ、予備実験を行えるまでの環境が整えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
RyRsのブロックによりうつ様状態が増悪したことから、RyRsのタンパク量の増大がCa2+放出量の増大とつながっていないことが推察された。よってアンチセンスによるノックダウン実験を一旦保留し、各受容体の機能評価を先に行うこととした。Ca2+イメージング測定システムは4月にほぼ完成し、予備実験も順調に進んでいる。これからうつ様モデル動物を用いた実験を本格的に始める。改良点として今回使用したオレゴングリーンは導入に時間がかかり、スライス標本の状態がその間に悪くなることから観察時間が短くなってしまうように見受けられた。今後はスライス標本作成手技の向上およびより導入時間が短いFluo-4の導入を試みるなど生細胞の残存数増加および長時間実験に耐えうる標本の作成を目指す。またうつ様モデルマウスの海馬におけるRyRsやIP3Rの機能評価を試みるために受容体の刺激剤や阻害剤の含まれた灌流液の切り替えによって各受容体の阻害下でのCa2+の放出量の変化を検討する。
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Causes of Carryover |
物品費については測定装置が完成するまでに各パーツの納期が1~2ヶ月かかったため、予備実験が開始できるまでに6ヶ月以上かかってしまい、試薬や動物などの購入があまり行えなかった。また、高額機器の納入価格が予算額を大幅に下回ったため差額が生じた。 その他については論文の英文校正料や掲載料を計上していたが作成が遅れたため次年度に持ち越す。
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