2019 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症における遂行機能障害のメカニズムと神経学的基盤の解明
Project/Area Number |
18K15506
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
高橋 芳雄 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (70760891)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 遂行機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経発達障害のひとつである自閉スペクトラム症では様々な認知機能障害が生じるが、その中の一つとして遂行機能障害があり、さらには自閉スペクトラム症の中核的な症状と密接に関連することが示されている。本研究課題では、自閉スペクトラム症(ASD)で生じる遂行障害のメカニズムを解明するために、これまでASD者20名、健常者40名から種々の遂行機能検査と、脳構造画像(T1強調画像および拡散テンソル画像)のデータを取得した。この中から、知的能力が平均域以上で且つ他の除外基準に該当しなかった研究協力者(ASD者11名と健常者37名)のデータを用いて、両グループの脳構造の差異や脳構造と遂行機能検査の関連などを検討した。比較においては、視空間ワーキングメモリー課題でASD者の遂行成績が低下していたものの、他の認知的制御やプランニングに関わる課題においては遂行成績に差が認められなかった。その一方で、認知的制御課題やプランニング課題では検査に回答する時間がASDで有意に遅延していることが認められた。遂行時間の遅延に関して認知的制御課題では右上前頭回の白質体積と、プランニング課題では左島領域白質の拡散異方性係数とそれぞれ関連が認められた。加えて、右前上頭回の白質体積と島領域白質の拡散異方性は健常者と比較してそれぞれ増加していることがわかった。これらの結果からは、ASD者における右上前頭回と島皮質領域の白質の構造的差異が、ASD者の遂行機能の障害に密接に関連していることが示唆された。これらの研究成果については、国内の研究セミナーや国外の学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルスの感染拡大の影響で、被験者のリクルートに支障が生じているものの、これまでのところ計画通り概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、目標症例に達するまでASD者のリクルートを行なっていく。目標症例数に達した時点でデータの解析を行い、論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
職務上または家庭の都合により、参加予定であった学会に参加できなかったこと、また年度末にリクルートが予定通り行えなかったことによって研究資金に余剰が生じた。これらの余剰については次年度の学会参加や被験者リクルートに関わる経費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)