2019 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症患者のiPS細胞を利用した前頭前皮質の発生、シナプス形成の生物モデル化
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18K15516
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
江口 典臣 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80814566)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 幹細胞 / 大脳皮質 / 中脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
・大脳皮質への分化誘導:前年度までに、健常者および統合失調症患者に由来するiPS細胞から大脳皮質様組織(大脳オルガノイド)への分化誘導実験に成功していた。誘導した組織中には大脳の神経細胞からなる層構造が形成されており、これらが神経幹細胞の層と神経細胞の層であることを確認した。これらの層構造は胎生初期の大脳皮質を模したものと考えられる。これらの層の厚さと、そこに含まれる神経細胞の数に違いがないかを検討したが、健常者由来と統合失調症患者由来の組織とで有意な差は認められなかった。本実験の結果からは、統合失調症患者では大脳皮質の発生に明らかな異常はないと考え得る。今後更なる検証が必要である。 ・中脳への分化誘導:前年度までに、PA6細胞上にiPS細胞を播種するSDIA法を用いた中脳ドーパミン神経の誘導には成功していた。得られた中脳ドーパミン神経のドーパミン取り込み能を測定し、これらの神経でドーパミントランスポーター(DAT)が機能していることを確認した。大脳皮質とのシナプス形成を検証するために、中脳ドーパミン神経のみを分離することを試み、培養条件の検討を行ったが、中脳ドーパミン神経のみを分離することには成功していない。PA6細胞を除くことが困難であるため、先行研究を参考に、PA6細胞を用いない別の分化誘導法を試みた。神経幹細胞を得ることに成功し、神経幹細胞を中脳ドーパミン神経へと分化させることにも成功しているが、分化誘導効率が低く、ごく少数の神経細胞しか得られなかった。より効率的に神経を得るための実験条件を検討していく。 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中脳ドーパミン神経への分化誘導のために、実験条件の検討が必要であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
中脳ドーパミン神経をより効率的に得られる実験条件を検討していく。3次元的な培養による中脳オルガノイドの誘導法も併せて検討する。
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Causes of Carryover |
予想に反して、中脳ドーパミン神経への分化誘導が効率的に行えず、実験条件の見直しを要しているため、新たな消耗品等の購入が少なかった。次年度には早期に実験条件を確立し、シナプス形成等の新たな実験を開始し、そのために必要な物品の購入に充てる計画である。
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