2018 Fiscal Year Research-status Report
産後うつ病の発症脆弱性に関わる脳内分子神経基盤の解明
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18K15517
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
樋口 尚子 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (00711269)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | うつ病 / 産褥期 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
産後うつ病は患者本人のみならず子の心身の発達に対する影響も大きいため、その病態解明は喫緊の課題となっているものの、産後うつ病の分子基盤研究は圧倒的に不足しているのが現状である。産後うつ病の病態を忠実に再現する動物モデル開発も十分行われていない。本研究の第一の目的は、産後うつ病発症の分子機序を明らかにすることである。ストレスはうつ病発症の周知の危険因子であり、ストレスの有害な影響およびうつ状態の発症を評価するため、ストレス負荷されたげっ歯類動物はうつ病のモデルとして考えられている。しかしながら、既存のうつ病モデル動物は主に肉体的ストレッサーへの曝露に依存しており、肉体的ストレスによる影響が排除できず、また、妊娠中のマウスに肉体的に強度のストレスをかけることができないということが産後うつ病のモデルを作成する上での課題となっている。そこで本研究では、肉体的なストレスはかけず、情動的なストレス(Emotional Stress)を加えるという方法を用い、新たなモデルがうつ病モデルマウスとして使用可能かどうかを検討した。ストレス脆弱性を有するBALB/c雄マウスを用いて、Stress群、Control群の2群に分け、ストレス群には視覚・聴覚情報を利用した情動的ストレス負荷を1日5分間、7日間連続で行い、対照群はストレスを受けずに飼育した。ストレス実験後、Social Interaction試験、Open Field試験、Forced Swim試験でうつ様行動を評価した。Emotional Stress群ではControl群と比較してうつ様行動を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
産後うつ病の作成準備として、肉体的なストレスはかけず、情動的なストレス(Emotional Stress)を加えることでうつ病モデルを作るという方法を用い、新たなモデルがうつ病モデルマウスとして使用可能であることをSocial Interaction試験、Open Field試験、Forced Swim試験などのうつ様行動を評価することで確かめることが出来た。これにより、妊娠マウスにストレス負荷を行い、出産後のうつ様行動を調べるための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
妊娠マウスに情動的ストレス負荷を行い、ストレス実験後、Social Interaction試験、Open Field試験、Forced Swim試験などのうつ様行動評価を行う。併せて、巣作りや児に対する養育行動の評価を行い、うつ様行動や養育行動との相関、各行動の変化と妊娠との関連性などについて解析を行う。産後うつ病モデルマウスの作成後、各脳部位の遺伝子変化や神経細胞活性化の指標であるc-fosの発現などを調べる。 産後うつ病のモデルマウスの作成後は、モデルマウスの養育下で育った児の発達やストレス脆弱性についても解析を行い、児への影響も明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
うつ病モデルマウスの脳サンプルの遺伝子発現変化などを解析する予定であったが、条件を揃えて解析を同時に行った方が測定誤差が小さくなるため、脳サンプルはディープフリーザーに保管し、次年度にまとめて解析を行うこととした。
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