2020 Fiscal Year Research-status Report
多発家系iPS細胞による双極性障害細胞モデルの開発と原因変異の探索
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18K15521
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高松 岳矢 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90801431)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 双極性障害 / 疾患iPS / 神経分化誘導 / 気分障害 / 疾患ゲノム / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は (1)レンチウイルスベクターを用いた神経細胞分化誘導系の条件検討、(2)分化誘導した神経細胞の解析の条件検討、(3)原因候補遺伝子Bの発現解析を行った。 (1) 前年度に引き続き、Zhangらの先行研究(Neuron, 2013年)を基にレンチウイルスベクターを用いてNeurogenin2遺伝子(Ngn2)をヒトiPS細胞に導入し、神経細胞をin vitroで分化誘導した。培養方法を細かく調整し、成熟した神経細胞を安定して得られる条件を繰り返し検討した。様々なトラブルがあったが、2020年度中にほぼ条件を決定することができた。 (2) 分化誘導神経細胞に対するカルシウムイメージングの条件検討を、前年度に引き続き行なった。2020年度はカルシウムイメージングに加えて、免疫細胞染色、ミトコンドリア膜電位、細胞内ATP、ミトコンドリアROSの測定の条件検討も行なった。カルシウムイメージングはFluo4AMを用いて温度を一定に保った倒立型蛍光顕微鏡で撮像した。免疫細胞染色は固定細胞を共焦点顕微鏡で撮像した。ミトコンドリア膜電位とミトコンドリアROSはそれぞれTMREとmitoSOXを用いて生細胞を染色し、共焦点顕微鏡で画像を取得し輝度を定量した。 (3)2020年度は、本課題外で行なったアレル特異的RNA発現解析により、本家系の気分障害に強く関連がみられる遺伝子Bを発見した。遺伝子Bは本家系内患者で疾患ハプロタイプ特異的に発現が低下していると考えられたことから、患者iPS細胞由来神経細胞でのアレル特異的な発現低下を、マーカーSNP特異的なTaqMan probeとデジタルPCRを用いて繰り返し検証し、再現性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で研究停止や子の自宅保育期間があり、研究計画全体に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度内に本研究計画の中で最も困難であったヒトiPS細胞から神経細胞の分化誘導系の構築はほぼ完成し、さらに原因候補遺伝子Bを見出すことにも成功したことから、2021年度に研究成果をまとめる準備は整った。患者、健常者のiPS細胞を並列で分化誘導し、カルシウムイメージング、形態の免疫染色、神経細胞マーカーの発現解析、ミトコンドリア機能解析、細胞内ATP測定を行う。細胞表現型を確認したのち、遺伝子Bのノックダウンなどより疾患と細胞表現型の関係を検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより研究を縮小、中断したため、結果として使用額が減少した。 2021年度はこれまでに条件を決定した神経分化誘導法と解析系を用いて、家系内罹患者と非罹患者を比較し、細胞表現型を明らかにする。
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