2019 Fiscal Year Research-status Report
Sex differences in opioid receptor function and brain region-specific processing
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18K15532
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
森屋 由紀 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (50783528)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 雌雄差 / 行動感作(逆耐性現象) / メタンフェタミン / 覚せい剤 / オピオイド受容体 / 再燃 / 薬物依存 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
依存性薬物は、脳内の細胞外ドパミン遊離を増加させ、極めて激しい快情動を引き起こす。さらに、薬物常用に伴う神経回路の異常興奮が長期間継続すると、報酬経路と行動を構成する重要な神経系に異常な可塑的変化が生じ、報酬効果や運動促進効果が亢進する、行動感作(逆耐性現象)が生じることがわかっている。覚せい剤であるメタンフェタミン (methamphetamine; METH)は、ドパミントランスポーターに作用して交換拡散によりドパミンを細胞外へ放出させることで細胞外ドパミン濃度を増加させる。また、METHはシナプス小胞モノアミントランスポーターに作用して小胞内のドパミンを細胞質へ放出させる。実験動物においては、METHの連続投与によって移所運動量増加効果の亢進(行動感作)を引き起こすことが示されている。 一方、麻薬であるモルヒネなどの作用標的分子であるオピオイド受容体は、薬理学的特性の違いによりμ、δ、κの三種類が存在し、依存形成やストレス感受性において重要な役割を果たすことが明らかにされているが、METHの依存形成やストレス負荷における役割は明らかにされていない。
そこで本年度は、雌雄差の観点から、野生型(WT)およびκオピオイド受容体欠損マウスにおけるMETH誘発行動感作に対するκオピオイド受容体の影響と長期的な心理社会的隔離ストレスの相互作用を評価した。
結果、全ての集団飼育マウスにおいてMETH行動感作を示した。集団飼育の野生型マウスと比較して、κオピオイド受容体ヘテロ欠損、およびホモ欠損マウスではMETHへの行動感作が強化されていることを確認した。隔離ストレス群において、雌では有意な差は確認できなかったが、雄では集団飼育に比べ全ての群でMETH誘発性行動量の減少が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の実験結果から、κオピオイド受容体欠損雄マウスでは心理社会的隔離ストレスによる影響が雌マウスより大きく、METHによる行動量が他のマウスより減少していることが示された。ストレス誘発性METHの行動感作形成と再燃にκオピオイド受容体が関与している可能性が明らかとなった。 δオピオイド受容体欠損、μオピオイド受容体欠損マウスを用いた同様の実験を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレス関連疾患のかかりやすさには性差があり、うつ病や不安障害の発症率は女性の方が男性よりも2倍近く高いことが知られている。また、その症状や生物学的基盤にも性差があることが徐々に明らかになってきており、性別に適した治療法を確立することが求められてきているが、多くの基礎研究は雄のモデル動物を用いて行われているのが現状である。 今後はストレス感受性の雌雄差を、δオピオイド受容体欠損とμオピオイド受容体欠損マウスを用いて解析する。 さらに、動物実験に麻酔薬として広く用いられてきたケタミンを用いた実験も検討している。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したが当初の見込み額と執行額は多少異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の経費も含め、当初の予定通りの計画を進めていく。
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Remarks |
公益財団法人 東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野 依存性薬物プロジェクト http://www.igakuken.or.jp/abuse/
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