2021 Fiscal Year Research-status Report
Sex differences in opioid receptor function and brain region-specific processing
Project/Area Number |
18K15532
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
森屋 由紀 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 研究員 (50783528)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | animal models / stress / sex differences / opioid receptors / behavioral sensitization / drug addiction / メタンフェタミン (METH) |
Outline of Annual Research Achievements |
覚せい剤であるメタンフェタミン(METH)は、反復投与によって移所運動量の増大を引き起こすことが示されている。行動感作(逆耐性現象)として知られるこの現象は、長期の休薬期間を置いた後にも容易に再燃し、薬物依存治療を困難にする一因となっている。実験動物においては、初回投与時と比較した際の移所運動量の増加により、行動感作形成を確認することが可能である。 麻薬であるモルヒネなどの作用標的分子であるオピオイド受容体は、薬理学的特性の違いによりμ(MOP)、δ(DOP)、κ(KOP)の三種類が存在し、依存形成において重要な役割を果たすことが明らかにされているが、METHの依存形成や行動感作における役割は明らかにされていない。そこで本研究では、薬物依存におけるオピオイド神経系の役割を明らかにすることを目的とし、METHを6日間連続投与(以下、METH慢性投与)したMOP、KOP、DOP欠損マウスと野生型マウス、及びコントロールマウスにおける移所運動量変化を解析し、その後8日間の休薬期間を設け、再びMETHを投与し再燃を評価した。 野生型マウス、DOPおよびKOP欠損マウスにおいては、METH慢性投与により顕著な移所運動量増加効果の亢進が確認された。一方、MOP欠損マウスにおいては、METH慢性投与による移所運動量増加効果の亢進は見られるものの、DOPおよびKOP欠損マウスと比較し亢進の程度は低かった。さらに、野生型マウス、DOPおよびKOP欠損マウスでは、休薬後も顕著に移所運動量増加効果が亢進しているにも関わらず、MOP欠損マウスでは休薬後の移所運動量増加効果の亢進は休薬前と比較して減弱していた。これらの結果から、METHによる行動感作形成や再燃にMOPを介した神経伝達が関与していると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
μオピオイド受容体が完全に欠損していることでMETHによる再燃を阻害した可能性が高い。 δオピオイド受容体ヘテロ欠損マウスでMETH感受性の雌雄差が確認できた。 今回の実験結果から、両性μオピオイド受容体ホモ欠損マウスでのみMETHによる再燃が減少していることが示され、METHによる行動感作形成と再燃にμオピオイド受容体が関与している可能性が明らかとなった。また、雌雄で行動感作形成の速さが異なる可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの薬物依存研究やストレス研究は女性(雌性)の性周期により研究結果の解釈が複雑になるという理由で、ほとんどが男性(雄性)を対象に行われてきた。性差をふまえた精神疾患の病態や治療法に関する研究が急務とされている。雄性のみを対象としたこれまでの研究デザインでは限界があるため、今後も性差を考慮した精神疾患の神経科学的なメカニズムをモデルマウスを用いて明らかにし、それに基づく新たな治療アプローチの開発に繋げたい。
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Causes of Carryover |
2021年度はマイクロダイアリシスの分析を行い、その結果をまとめる予定であったが、コロナ化で飼育環境に変化が生じ、マウスの繁殖が間に合わず、別の方法で解析をすることになった。計画を変更し、行動薬理学実験をメインに解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。現在、その結果を論文にまとめ投稿中である。次年度は国際学会で発表を行い、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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