2019 Fiscal Year Research-status Report
情動を制御する眼窩前頭皮質ー扁桃体回路の発達様式とストレスが与える影響の解明
Project/Area Number |
18K15533
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
國石 洋 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, リサーチフェロー (60805034)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 幼少期ストレス / 眼窩前頭皮質 / 扁桃体 / 発達変化 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼少期の過剰なストレスは、社会性の問題や過剰な衝動性を症状に持つ種々の精神疾患の発症リスクを増加させる。しかし、幼少期に情動制御を担う神経回路が発達するメカニズムや、そこにストレスが与える影響は、未だ不明な点が多い。一方、児童虐待を経験した患者は、情動制御に重要な眼窩前頭皮質(OFC、前頭葉腹側部)と扁桃体間の結合性の異常が報告されている。前頭葉-扁桃体投射経路は幼少期に発達するため、幼少期のストレスがOFC-扁桃体回路の発達に悪影響を及ぼすとことで、成熟後の情動制御異常を招く可能性が示唆される。そこで本課題では、げっ歯類のOFC-扁桃体シナプスの電気生理学的特性の発達変化と情動行動への寄与を調べ、情動回路の発達様式の解明を目指す。さらに、その発達変化に幼少期ストレスが与える影響を調べることで、幼少期ストレスが情動行動の異常を招くメカニズムの一端を明らかにする。 昨年度は、幼少期ストレスモデルマウス系の立ち上げ(離乳後隔離飼育による社会性の低下、衝動性の増加)とOFCから扁桃体に投射投射するシナプス伝達の単離計測系の確立を行った。本年度は社会性、衝動性制御に関与するとされる、内側OFCから扁桃体に投射する神経回路に注目し、幼少期の隔離飼育がこの回路のシナプス伝達に与える影響を調べた。アデノ随伴ウィルスベクターを用い、内側OFCに光感受性陽イオンチャネル:ChR2を発現させ、投射先の扁桃体スライスからパッチクランプ記録を行い、青色光を照射することでOFC-扁桃体外側基底核(BLA)間のシナプス伝達の単離計測をした。その結果、幼少期隔離飼育マウスは、成熟後の内側OFC-BLAシナプス伝達におけるAMPA電流比の低下などのシナプス特性の変化が観察された。この結果より、幼少期ストレスは内側OFC-BLA回路の情報処理に影響を与え、社会性や衝動性の異常を招く可能性が示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、幼少期ストレス動物におけるシナプス伝達の異常を観察できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、幼少期社会的隔離マウスにおける、内側OFC-扁桃体シナプス伝達の異常と社会性の低下、衝動的攻撃性の増加の因果関係を明らかにするため、光遺伝学を利用して行動下のマウスの内側OFC-扁桃体回路のシナプス伝達を操作し、社会性・衝動性へ与える影響を調べる。また、幼少期に内側OFC-扁桃体回路が発達する神経活動依存的メカニズムを明らかにするため、薬理遺伝学およびCre-loxPシステムを用いて幼少期特異的な内側OFC-BLA回路の神経活動操作を行う。
|
Causes of Carryover |
当初はウィルスベクター投与手術の効率向上のため、マイクロインジェクションポンプ購入分を計上していた。しかし、当施設に確立済みのセットアップで対応できたので、購入を取りやめ、次年度使用額が生じた。次年度のウィルスベクター購入費LEDカニューレ代に使用する。
|
Research Products
(8 results)