2019 Fiscal Year Research-status Report
機能的有機材料に加速器BNCT水等価ボーラス材としての新たな可能性を見出す
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18K15570
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Research Institution | Southen Tohoku Research Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
新井 一弘 一般財団法人脳神経疾患研究所, 南東北BNCT研究センター, 研究員 (30817630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT / ボーラス / 線量分布 / メラノーマ |
Outline of Annual Research Achievements |
小型化されたホウ素中性子捕捉療法BNCTのための加速器型中性子発生装置では、より深部の病変に対応できるよう発生中性子スペクトルが最適化され、かえって表在病変に対しての中性子フラックスが十分確保できない状況が生じている。本研究では自重の10-30倍の吸水を可能とする新規有機ポリマー材料と、優れた柔軟性およびUV照射による硬化性質を示す光加工硬化型樹脂フィルムを用い、応用性が高く加速器BNCTに最適化された全く新たなボーラス技術の開発を図ることを目的とした。まず、ボーラス選定・作製と性状評価を実施し、創傷治癒被覆材である市販のハイドロサイトがもっとも加工に適している材料として選定された。またシミュレーションにより、ハイドロサイトから加工され作製されたボーラスをファントムに貼り付けたときの線量変化は、実測とほぼ同様であった。熱中性子フラックスのピークは水ファントムの深部は1cmとかなり皮膚表面に近づくことが明らかとなった。次にヒトの足底部の3箇所のメラノーマを想定して、SERAを用いて治療計画を立案し、ボーラスの有無による線量分布の改善を評価した。ボーラスを使用しない場合は照射時間が185.6 ± 56.4分 (1 mA)、腫瘍最大および平均線量は110.7 ± 31.6 Gy-Eq, 66.2 ± 13.0 Gy-Eqとなり、3症例全てで皮膚の最大線量は15 Gy-Eqを超えていた。ボーラスを使用した場合は照射時間が48.4 ± 15.9 分(1 mA)、腫瘍最大および平均線量は58.5 ± 5.3 Gy-Eq, 48.2 ± 4.2 Gy-Eqとなり、皮膚線量は12.7 ± 1.6 Gy-Eqと、ボーラスを使用しない場合と比較して大きく低下した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度に当初予定されていた「課題4:頭頸部人体型水ファントムを用いた表在部および深部線量評価」が、ファントムの内部においての線量評価ための線量計の留置が極めて困難であるということがわかり、実験方法の変更を余儀なくされた。これによって遅延が生じ、1年の延長が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、平成30年度の成果として選定されたボーラスを用いて、その臨床的特性を評価した。これらの実施内容は、当初申請書に記載した予定である「課題3:箱形水ファントムを用いた線量測定による物理特性の解明」と当初予定された「課題4」に代わる検討として、健常なヒトの足底のCTを用いた検討を実施する事にした。令和2年度には、この検討を終了し、課題4についての再検討を行うことで、さらに今回見出されたボーラスの臨床的有用性を明らかにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
実験の方法に一部変更が生じ、今年度の実施が研究費使用を有さないものが大半となった。また新型コロナの影響で当初予定していた国際学会および国内学会などの複数の学会への参加がとりやめになるなどしたため、その分が次年度へ繰り越される状況となった。
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