2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel treatment for radiation induced gastrointestinal disorders using intestinal flora
Project/Area Number |
18K15578
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
辻口 貴清 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (90737454)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内フローラ / 放射線誘発消化管障害 / 被ばく医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
高線量の放射線に曝露された個体では,放射線感受性である造血幹細胞からなる送血系や上皮幹細胞の充実した腸管は強い損傷を受け,最終的には個体死につながる.特にこれまでの放射線事故や災害で発生した患者個体では,重度の消化管障害を軽減できた例はないことが明らかである.さらに,重度の消化管障害の一つとして敗血症があり,この原因ともなる消化管細菌は『腸内フローラ』と呼ばれ,生活習慣病や循環器疾患等と強い関連を持つことも知られている.しかしながら,放射線曝露に伴う腸管機能と腸内フローラとの関係の詳細は全く不明である.こうした問題解明を目的に,放射線曝露個体における,①放射線曝露後の腸内フローラの変化解析,②腸内フローラ変化と腸管機能・障害の相関解析,③腸管障害治療における腸内フローラの有用性を検討し,高線量放射線誘発消化管障害の治療法開発に資する. 平成30年度は放射線曝露マウスにおけるX線照射後の腸内フローラの経時的変化(照射後1, 2, 6, 12, 24, 48, 72時間)を解析した.2Gyおよび4GyのX線照射マウス群において,照射直後に乳酸菌量の減少が検出された.しかしながら,4Gy照射マウス群においてビフィドバクテリウムの相対的な増加が観察された.既存の研究報告において,一部のビフィドバクテリウムが腸管のバリア機能を強化し,病原菌や異物の血液中への移動を防ぐことが報告されていることからも,ビフィドバクテリウムが腸上皮組織の再生およびバリア機能面において放射線防護の役割を担っていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線曝露マウスの腸内フローラ解析により,線量依存的または経時的に特徴的な変化を示す細菌を発見することができた.また,それら細菌群の特性や腸管バリア機能との関係を調査することができた.平成30年度の結果は既にJournal of Radiation Reseachに掲載されており,業績も残すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)は,引き続き着目する腸内細菌を絞りつつ,放射線照射による腸内フローラの変化と消化管バリア機能がどのように関係しているかを追求していく.具体的に,1. 形態学的評価:HE・PAS/マルシアン重染色評価,2. アポトーシス評価:TUNEL・Caspase3染色,3. 免疫染色評価:腸上皮細胞内タンパク解析,4. 膜タンパク接合に係るmRNA発現量解析,5. ELISA解析:粘膜バリアに係るムチン解析,を実施する.
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Causes of Carryover |
平成30年度の成果をJournal of Radiation Reseachに投稿しており(結果的に年度内にaccept,掲載料の支払いは平成31年度となった),掲載料の請求が平成30年度に来た場合に備えて一部を残す形となった。残した額は交付決定額の1%以下である.研究成果は順調であり,消耗品等も十分に購入させていただいていることから,次年度以降の研究計画に変更はない.
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