2018 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of computational dosimetric method for pediatric proton beam therapy
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18K15582
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Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
高田 健太 群馬県立県民健康科学大学, 診療放射線学部, 准教授 (10640782)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / モンテカルロ計算 / PHITS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,モンテカルロコードPHITSと,PHITSで出力した計算結果を読み取ることのできる線量評価システム:Tsukuba-Planとを組み合わせ, 陽子線治療に潜在している複数の医学物理学的課題を解決することを目指すものである. 陽子線治療の線量分布は, ビーム輸送系と呼ばれるさまざまな器具によって変化する.ビーム輸送系は基本コンポーネント(ビームエネルギーとSOBP厚)と,患者個々の照射パラメータ部分(ボーラスおよびコリメータ形状,等)から構成され,これらのビーム輸送系を正確に模擬した線量計算体系を構築する必要がある.最終的には,ビーム輸送系と,その下流に位置する人体モデルの計算体系とを組み合わせたシミュレーション用インプットファイルを生成する必要がある. 2018年度には,臨床で使用されている4種類のビームエネルギーと,9種類のSOBPフィルタ厚(20 mmから100 mmまで,10 mm刻み)の組み合わせ,すなわち計36パターンの基本コンポーネントの線量計算体系を構築した.さらに,患者個々に異なる照射パラメータ(特にボーラスと呼ばれる器具)については形状が極めて複雑で,手動でインプットファイルに組み込むのは効率が悪い.そのため,これらの器具について,シミュレーション計算体系内に組み込むことができるロジックを考案した.元来BNCT用の線量評価システムであるTsukuba-Planで,陽子線治療のシミュレーションを実施するためには,Tsukuba-Planが構築する人体モデルの計算体系と,本研究で構築した陽子線治療のビーム輸送系(基本コンポーネントは36種類)とを統合したPHITS計算用のインプットファイルに変換する必要がある.当該年度には,そのために必要なソフトウェアを開発し,生成したインプットファイルが正確な座標系でシミュレーションできているかについても検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床的に使用されている4種類のビームエネルギーと9種類のSOBP厚(計36パターン)のビーム輸送系について,モンテカルロ計算用の線量計算体系を構築した.また,線量計算時間が長い(時に数時間)というモンテカルロシミュレーションの弱点を改良するため,並列計算環境を整備したことで,すべてのパターンについて実測値と比較し,かつ,本研究で構築した陽子線治療のシミュレーション体系で得られる線量分布が,上述の36パターン全てにおいて実測値を再現できる環境が整った.また,患者個々にことなる照射パラメータに関しては,特に粒子線治療用のボーラスと呼ばれる複雑な形状をした器具をどのようにシミュレーション体系内に再現するか,という点が懸念であった.この懸念に対しては,臨床的に使用されている治療計画システムで構築するボーラスの設計データを基にし,ビームの深度方向に対して細分化されたレイヤーごとにボーラス材質の有無を判定するロジックでシミュレーション体系内に組み込むソフトウェア(java)を開発することで解決させた.また,このソフトウェアを利用して作成した陽子線治療用インプットファイルをPHITS上で実行し,その計算結果をTsukuba-Planで線量分布図として再現できることは確認できた.これらは研究計画立案当初通りの研究進捗状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究で,臨床の陽子線治療で用いられているビーム輸送系の基本コンポーネント部分について,さまざまなビームエネルギーとSOBP厚の組み合わせに対してでもシミュレーションで線量評価ができるよう整備を終えた.また,患者個々に異なる照射パラメータについても,semi-automaticにPHITSの線量計算体系に取り込んだインプットファイルを生成できる基盤を整えた. 次なる課題は,Tsukuba-Planを用いて陽子線治療ビーム照射時の『人体内での線量分布』を正確かつ迅速に取得する事である.Tsukuba-Planは元来,ホウ素中性子捕捉療法用(BNCTという)に開発された線量評価システムで,BNCTでは患者に対して一方向から照射するという,一門照射と呼ばれる照射方法が一般的である.一方,陽子線治療の場合には一門照射のみならず,2門以上の多門照射が用いられることがある.2018年度の予備的な取り組みによって,Tsukuba-Planで多門照射を再現できることは確認済みであるが,手動による操作であること,かなり煩雑な処理過程を経る必要があることなどの理由から,時間的な効率が悪く,汎用性が悪いことが分かった.次年度には本処理過程を工夫することで,Tsukuba-Planによる多門照射の再現等,さまざまな線量評価が実現できるように研究を進める予定である.この部分を改良することによって,当初の研究目標を達成できる見込みが高まると考えられる.
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Causes of Carryover |
2018年度に実施したソフトウェア開発に要する費用が,当初想定していた金額に対して抑制できたことが主因である.2018年度10月より所属変更となったが,前所属大学の客員研究員として引き続き研究を継続できる環境である. 2019年度にはTsukuba-Planを用いて陽子線治療ビームを人体ファントムモデルに対して複数の方向から照射した場合の線量評価を実施する予定である.現在のTsukuba-Planで多門照射の線量評価を実施することは極めて煩雑な作業を要するので,このプロセスを見直し,容易に多門照射を評価できる基盤構築にも努める.
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Research Products
(2 results)