2018 Fiscal Year Research-status Report
有限要素法シミュレーションによるEVAR術後の長期的影響に関する流体力学的解明
Project/Area Number |
18K15586
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
濱口 隆史 金沢大学, 附属病院, 診療放射線技師 (20749329)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 流体解析 / 腹部大動脈瘤 / ステントグラフト / 有限要素法 / CT / MRI / カテーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,腹部大動脈瘤ステントグラフト治療後患者において,有限要素法シミュレーションを用いた血液の流体力学的情報を,従来のCT検査に付加することである.このシミュレーションには,3Dプリンターで作製した血管モデルと流体ポンプを用いたファントム実験,および,健常ボランティアに対し,心電図同期併用三次元シネ位相コントラスト法を利用したMRI検査を行うことで,解析値の検証とパラメータの補正を行い,高い精度を確保することが重要である. 本研究代表者の所属施設へ平成30年4月に新規導入されたMRI装置を使用し,健常ボランティア10名についてMRI検査を実施し,それらの平均から正常な腹部大動脈への流速波形を定義することが可能となった.この正常例における流速波形を再現可能な流体ポンプを使用し,腹部大動脈瘤モデル内の圧・流速値を測定する検証実験を行うことで,有限要素法シミュレーションの解析精度との比較検証を可能とする.ファントムとして用いる腹部大動脈瘤モデルを3Dプリンターによって作製することを予定しているが,この瘤形状を決定するにあたって,本研究代表者の所属施設で過去に腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療が実施された症例を参照する.そのために2002年9月まで遡ってデータを収集し,現在までに400例を超えるステントグラフト治療症例を登録することが可能となった.これら症例におけるCT画像から瘤の位置・径・形状(紡錘状,嚢状)等についての三次元的なデータ分析作業が進行中である. 今後,3Dプリンターで作製した血管モデルと流体ポンプを用いたファントム実験を当初の計画通り進めると同時に,膨大なCT血管画像データの流体解析のために,ソフト面(プログラムの最適化)およびハード面(解析マシンの高速化と協力スタッフの増員)を考慮した研究実施の効率化を計画している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4D-Flow MRI検査が可能なMRI装置は平成30年4月に研究代表者の所属施設へと新規導入され,健常ボランティア10名における心電図同期併用三次元シネ位相コントラスト法を利用した撮像実験は予定通り終え,正常な腹部大動脈内への流入波形を定義すること可能となった.しかし,4D-Flow MRIを用いた血管内の流速・流線画像を解析するアプリケーションの導入が平成31年3月に遅延したため,ボランティア実験およびファントム実験における血管内の流体解析を実施できない状況であった.その間,次年度に予定していた,過去に腹部大動脈瘤ステントグラフト治療が行われた症例におけるCTアンギオグラフィー画像検査のデータ収集が進み,現在までに当初の目標を大幅に上回る475例を登録することができた.そのため,これらの症例の中から流体ファントム実験に最適なモデルを選定することとし,その三次元的なデータ分析作業が進行中であり,同時に3Dプリンターによって作成する腹部大動脈瘤ファントムを血管壁と同等の弾性率とするための素材および厚さについて検証中である.流体ファントム実験に必要な流体ポンプは他施設から借り入れることが可能となった.健常ボランティア実験で得た正常な腹部大動脈への流速波形をこの流体ポンプに入力し,MRIおよびカテーテルを使用したファントム実験下で利用できることを確認した. 以上より,本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
3Dプリンターで作製した血管モデルと流体ポンプを用いたファントム実験を当初の計画通りに実施する.血管モデルにおける素材や厚さの選定や,模擬血流の密度・粘度調整といった実験設定等について予期しない課題が発生し,さらに実験の完遂が遅延する可能性もある.そのため,ステントグラフト治療を受けた症例について,その術前および術直後,さらにその後の経過観察におけるCTアンギオグラフィー画像のデータ分析や,ステントグラフトの形状,素材,メーカ等の情報収集についても同時に進行する必要がある. 当初の計画における目標数を大きく上回るCTアンギオグラフィー画像データ数を登録できているが,それらの詳細なデータ収集作業や,三次元的なデータ分析,有限要素法シミュレーションの解析時間に大幅な延長が予想される.そのため,ソフト面(プログラムの最適化)およびハード面(解析マシンの高速化と協力スタッフの増員)を考慮した研究実施の効率化を検討している.
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Causes of Carryover |
ファントム実験に必要な流体ポンプの購入に本助成金を使用予定であったが,他施設から借り入れることが可能となったため,その費用を今年度に使用する必要がなくなり,次年度使用額が生じた.しかし,当初の計画よりも大幅に解析対象数が増加したため,解析プログラムの最適化や,より高速な解析マシンの追加導入が必要となったため,翌年度分として請求した助成金と合わせてこれらにも使用する予定である.
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