2019 Fiscal Year Research-status Report
陽子線がん治療における生成反応断面積の測定及び体内線量評価システムの開発
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18K15595
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松下 慶一郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10769847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 陽子線治療 / 破砕反応 / 断面積 / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
陽子線治療において腫瘍へ的確に陽子線が照射されなかった場合、治癒率の低下や重要臓器への障害が生じる可能性があり実際に陽子線が照射された範囲とその線量分布を確認することが重要である。陽子線治療では入射陽子と人体を構成する原子核との間で生じる原子核破砕反応により陽電子放出核が生成される。この陽電子放出核からの消滅γ線を測定することで陽子線が照射された範囲を測定することができる。 更に消滅γ線の分布を線量分布へ変化することができれば実際に照射された線量分布を確認することが可能となる。この消滅γ線分布-線量分布変換の重要な物理的データが陽電子放出核の生成断面積である。 本研究では陽子線がん治療における原子核破砕反応による陽電子放出核の生成断面積の測定及びそれを利用したモンテカルロシミュレーションによる生体内線量評価ソフトウェアの開発を目的とする。 2019年度は2018年度の測定結果を基に放射線医学総合研究所サイクロトロンの70 MeV陽子線を用いて、酸素核に対する陽電子放出核の生成断面積測定の追加実験を実施した。本年度は2018年度の測定結果を基に測定体系を改善しより精度の高い15O、13N、11Cの生成断面積の測定に成功した。導出した断面積はNNDCに報告されている過去の測定データともよく一致し特に低エネルギー領域の精度向上に成功した。またこれまでに報告数が少ない11Cの生成断面積値を昨年度より高精度で導出することができた。本年度の測定結果は第118回日本医学物理学会学術大会で報告を行った。実験により導出した断面積測定結果をまとめ、国際論文投稿の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度同様放射線医学総合研究所サイクロトロンの70 MeV陽子線を用いて、人体構成元素の中で最も重要な原子核である酸素核に対する陽電子放出核の生成断面積測定実験を実施した。水(H2O:ゼラチン質にした物)をターゲットとし70 MeVの陽子線を照射した際に酸素核から生成する主な陽電子放出核として15O、13N、11C(半減期は順に122.2秒、597.9秒、1222秒)の3種類が挙げられる。これらの生成された陽電子放出核を測定するために、ターゲットへ陽子線照射後プラナータイプPET検出器を用いて消滅γ線の測定を行った。昨年度の結果を踏まえPET検出器間の距離を広げることでターゲット中で発生する散乱線の影響を低減させることに成功した。測定された陽子線進行方向に対する消滅γ線の強度分布及びターゲット深部位置での消滅γ線減衰曲線から各チャンネルの生成断面積を導出した。散乱線の影響が低減したことで昨年度の結果と比較し、低エネルギー領域の断面積の精度を向上させることに成功した。特に11Cの生成断面積は過去十数年以上前に測定されたデータと比較し異なる傾向を示し、より精度の高い断面積データを測定することに成功した。 本年度は実験、解析結果を第118回日本医学物理学会学術大会にて報告を行った。今回までの結果をまとめ投稿論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は70 MeVより低いエネルギーの陽子線を用いて本年度測定した酸素核に加え炭素核、カルシウム核の低エネルギー領域のより精度の高い断面積測定を目指す。 また本年度の結果をまとめ国際論文へ投稿を行う。並行してモンテカルロシミュレーションシステム構築を進める。
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Causes of Carryover |
実験の進行状況により測定データ保存用の新規ストレージ、新規でのターゲット作成等が必要では無かったため差額が生じた。 来年度は学会発表、論文校正、追加実験出張、必要に応じてデータ保存用ストレージ、ターゲット作成などに使用する。
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