2018 Fiscal Year Research-status Report
Effect of LET of heavy ion beam on cancer metastasis
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18K15632
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 和彦 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (70718981)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん転移 / 炭素イオン線 / LET / 細胞浸潤 / 細胞遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者の急速な増加と高齢化に伴い、より浸襲性の少ないがん治療が望まれている。また、医療費の高騰を抑制するためにも、コスト的にも有利ながん治療が期待される。その両面から放射線治療の適応は急激に高まっている。しかし、外科、化学療法を含む集学的な局所療法の進歩で、良好な局所制御がなされるようになっている現在においても、今なおがんの遠隔転移は最大の課題である。炭素イオン線の効果を最大限に引き出す為にLETの制御を目指した物理研究が進んでいるが、LETとがん転移能の関係は未だ良く分かっていない。近年、細いビームを用いて照射野内を塗りつぶす様に照射できるスポットスキャニング照射法とビームを様々な角度から照射できる回転ガントリー照射装置の臨床導入が進み、線量集中性の改善および照射野内でのLETペインティングが可能となってきている。つまり、照射野内の線量増加とLET均一性の保持が期待できる。また、複数の核種を同時に重ね合わせて照射する強度変調混合イオン照射法(IMPACT)による照射野内LETの増加を期待できる試みも出てきた。この様に、炭素イオン線の効果を最大限に引き出す為にLETの制御を目指した研究が進んでいるが、LETとがん転移能の関係を示した報告はない。本研究課題では、細胞実験、動物実験を通しLETとがん転移能に何らかの関係があるか否かを問うこととした。本年度は、乳がん細胞の細胞遊走脳と細胞浸潤能を様々なLETを用いて検討した。その結果、LETと細胞浸潤能に一定の相関があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞実験を主に行った。高浸潤性乳がん細胞に対して、炭素イオン線のLETを15, 50, 70, 85, 150 keV/μmと段階的に変化させ、それぞれの条件で0.01, 0.05 Gyを照射した。その結果、85 keV/μmまでは、LET依存的に細胞浸潤能が抑制される結果を得た。これにより、炭素イオン線照射は、LETをコントロールすることで、殺細胞効果のみならずがん転移の一因である、細胞浸潤能を抑制させる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞実験では、LETの違いにより細胞浸潤能の抑制が起きることが分かった。今後の方策としては、この機構の分子メカニズムを遺伝子・タンパク実験から解明することと、動物実験により細胞実験との整合性を検討する。
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Causes of Carryover |
細胞実験を主として行った為、動物の購入を見送った為、次年度に動物実験の為のマウス購入を行う。
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