2018 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーによる細胞防護効果の分子機構の解明と新規治療法への展開
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18K15653
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 基史 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90807801)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オートファジー / 細胞周期チェックポイント / 放射線増感効果 / 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線治療は有効な治療法であるものの、放射線抵抗性を獲得したがんでは治療効果が低い。その放射線抵抗性を決定づける因子のひとつに細胞周期チェックポイントがある。放射線を照射された細胞ではチェックポイントが活性化し、がん細胞が生存するのを助ける。申請者はこれまでに、放射線によって活性化したチェックポイントを抑制すると細胞死が増加することを明らかにしてきた。しかし、チェックポイントがどのように放射線抵抗性を導くのかという分子メカニズムについては明らかにできていない。本課題では、細胞が備え持つもうひとつの細胞防護機能として注目を集めているオートファジーと細胞周期チェックポイントの相互作用が放射線抵抗性を誘導すると仮説を立て、この点について検証する。本研究から放射線抵抗性獲得のメカニズムが明らかになれば、治療ターゲットの開発や新しい放射線治療計画の立案などにつながることが期待される。 本年度はオートファジー活性が高いことが治療抵抗性に寄与しているとされる膵がんを標的とし、膵がん細胞株に放射線を照射した際の細胞周期チェックポイントおよびオートファジー活性の詳細について検証した。複数の膵がん細胞株にX線を照射するとオートファジーおよび細胞周期チェックポイントが同じタイミングで活性化することを明らかにした。またそれぞれの機構を標的とした低分子を用いて機能を阻害すると細胞死が増加、つまりは放射線増感効果が観察された。さらに、この両機構の間には密接な相互関係が存在することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度途中に前職の放射線医学綜合研究所から北海道大学に異動したことにより、申請書に記載した細胞実験の一部に遅れが生じている。具体的にはオートファジーの分裂期崩壊への影響を解析できていないため、やや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞周期チェックポイントとオートファジーに相互関係がどのように治療抵抗性に寄与しているのかの分子メカニズムについて明らかにする。具体的には放射線によって誘導される細胞死形態である分裂期崩壊や、ATP産生などのエネルギー代謝への影響について評価する。
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Causes of Carryover |
申請者所属機関の異動に伴い、参加・発表予定であった学会などに参加しなかったため。また英語論文についても同様の理由により執筆準備が遅れたため。 使用計画については一部遅れている実験を行うための消耗品や、現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。また,国内外の学会参加費も支出予定である。
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