2018 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸酸化異常症代謝プロファイル解析による高精度診断法の確立
Project/Area Number |
18K15663
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
湯浅 光織 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (80792100)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 脂肪酸酸化異常症 / カルニチンサイクル異常症 / 新生児マススクリーニング / アシルカルニチン分析 / 末梢血単核球 / 安定同位体標識脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに末梢血単核球を用いた安定同位体標識脂肪酸負荷による脂肪酸酸化能検査法を開発している。今年度は、2008-2018年に本疾患群の患者に本検査を施行したデータを解析し、CPT-I欠損症・CPT-II欠損症・Very-long-chain acyl-CoA dehydrogenase(VLCAD)欠損症・Trifunctional protein(TFP)欠損症・Medium-chain acyl-CoA dehydrogenase(MCAD)欠損症において有用な診断指標を見出した。またCPT-II欠損症・VLCAD欠損症・TFP欠損症の3疾患において、総合的な脂肪酸酸化能を示す指標が有意に低下していることを確認した。 MCAD欠損症においては、非典型的な中鎖脂肪酸酸化能を示す症例群がすでに見出されている。すなわち、C8(炭素数8)アシル-CoAを基質としたMCAD活性が非患者レベルを示すにも関わらず、C8アシルカルニチンの高値が持続し、ACADM遺伝子変異が確認される症例群である。2017年にこれらの患者で本検査を行ったデータを解析したところ、MCAD低活性例と異なる代謝パターン(C8からC6への反応がある程度保たれるものの、C6からC4への反応が低下する)を示すことが見出された。 さらに、本疾患群の新規患者(2018年発症もしくはスクリーニング陽性例)において検査を施行しデータを収集した。2018年度の施行件数は17件で、うち診断に至った患者は9名であった。しかし9名のうち2名は遺伝子解析で非患者であることが確認された。 本検査では、末梢血単核球内の脂肪酸酸化の流れを直接観察することができるため、酵素障害部位をin vitroで評価でき、診断にある程度有用と考えられる。しかし遺伝子解析との関連についてはさらなる検討が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪酸酸化能検査においては、これまでに得られたデータを解析して英語論文・国際学会にて発表を行っており、本研究はおおむね順調に進展していると考える。 当初MCAD欠損症・VLCAD欠損症において、アシルカルニチンと同時に蓄積すると考えられるアシルグリシンをLC-MS/MS(液体クロマトグラフィタンデム質量分析計)を用いて測定することについて、診断精度を高める方法として検討していた。しかし前述の脂肪酸酸化能検査が簡便性・有用性の面で上回ると判断し、現在検討を保留としている。今後脂肪酸酸化能検査では表現不可能と思われる代謝障害の実態が判明すれば、再検討の予定としている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き新規患者において本検査を施行しデータを収集する。 本疾患群はそれぞれが大変まれな稀少疾患であるために患者の収集には工夫を要する。所属施設の小児科代謝検査部門において先天代謝異常検査(アシルカルニチン分析・アミノ酸分析・有機酸分析)を行っているため、本疾患群の生化学診断が確定した患者においては、主治医に案内し、検査に協力いただくよう依頼している。また、これまでと同様に共同研究者と情報共有を行っていく。 MCAD欠損症においては、遺伝子変異と代謝パターンの関連について検討を進める。他疾患についても、酵素活性測定値・遺伝子変異のデータを収集し、解析酵素活性値や遺伝子解析との関連についてはさらに検討を要する。
|
Causes of Carryover |
消耗品の使用が当初の予定より少なかったため。次年度、消耗品・試薬の購入に使用予定である。
|