2019 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸酸化異常症代謝プロファイル解析による高精度診断法の確立
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18K15663
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
湯浅 光織 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 特命助教 (80792100)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脂肪酸酸化異常症 / カルニチンサイクル異常症 / 新生児マススクリーニング / アシルカルニチン分析 / 末梢血単核球 / 安定同位体標識脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々が開発した脂肪酸酸化能検査(末梢血単核球を用いた安定同位体標識脂肪酸負荷によるトレーサー実験)を用いて、2018年度に引き続き、2019年度も患者検体の分析を行った。2019年度の施行件数は17件であった。このうち診断に至った患者は7例(6例:遺伝子変異あり、1例:遺伝子検査結果未着)であり、疾患の内訳はMedium-chain acyl-CoA dehydrogenase (MCAD)欠損症2例、Carnitine palmitoyl transferase(CPT)-II欠損症5例であった。遺伝子変異が確認された患者のうち1名は酵素活性が正常範囲であり、本検査・遺伝子検査と解離していた。また非患者と判断されたのは10件で、うち2例(いずれもVery-long-chain acyl-CoA dehydrogenase(VLCAD)欠損症)は遺伝子解析で片アリルに変異をもつ保因者であった。2例のうち1例は酵素活性で患者レベルの低値を示したが、本検査では正常対象と患者の中間に位置する結果であった。ここでも酵素活性と本検査・遺伝子検査との解離が見られた。 2018年度は本検査で偽陽性例が見られたが、2019年度は上記のように偽陽性例はみられず、酵素活性よりも遺伝子検査結果を支持する結果が得られた。酵素障害を正確に評価できているものと考えられるが、さらに件数を増やして検討する必要がある。 MCAD欠損症においては、C8(炭素数8)アシル-CoAを基質としたMCAD活性が非患者レベルを示すにも関わらず、C8アシルカルニチンの高値が持続し、ACADM遺伝子変異が確認される症例群が以前より確認されている。これらの症例は本検査で低活性例とは異なるパターンを示していることがすでに見出されている。現在データを解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂肪酸酸化能検査の手法や患者検体の分析結果については、今年度もそれまでに得られた結果をまとめて国内学会で発表を行っている。また、確定診断に本検査が貢献した症例においては、施設から症例報告がなされている。よって研究はおおむね順調に進展していると考える。 当初MCAD欠損症・VLCAD欠損症において、アシルカルニチンと同時に蓄積すると考えられるアシルグリシンをLC-MS/MS(液体クロマトグラフィタンデム質量分析計)を用いて測定し、診断精度を高める方法の確立を検討していた。しかし前述の脂肪酸酸化能検査が簡便性・有用性の面で上回ると判断し、この検討を中止とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き新規患者において本検査を施行しデータを収集する。本疾患群はそれぞれが稀少疾患であるために患者の収集には工夫を要する。所属施設の小児科代謝検査部門において先天代謝異常検査(アシルカルニチン分析・アミノ酸分析・有機酸分析)を行っているため、本疾患群の生化学診断が確定した患者においては、主治医に案内し、検査に協力いただくよう依頼している。 またMCAD欠損症においては、遺伝子変異と代謝パターンの関連について検討を進め、論文化する。他疾患についても、酵素活性測定値・遺伝子変異のデータを収集し、解析酵素活性値や遺伝子解析との関連についてさらに検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品・試薬の使用が当初の予定より少なかったため。2020年度、試薬の購入に使用する予定である。
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[Presentation] 標識脂肪酸負荷末梢血単核球中のアシルカルニチン比による脂肪酸代謝異常症の診断2019
Author(s)
湯浅 光織,畑 郁江,杉原 啓一,磯﨑 由宇子,重松 陽介,大嶋 勇成,津村 弥来,香川 礼子,岡田 賢,原 圭 一,但馬 剛
Organizer
第122回日本小児科学会学術集会
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