2019 Fiscal Year Research-status Report
移植関連血栓性微小血管障害における補体関連遺伝子の変異解析
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18K15679
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山田 愛 宮崎大学, 医学部, 助教 (90816688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TA-TMA / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
小児の血液腫瘍領域における造血細胞移植(HCT)技術向上が予後改善につながっている。しかし造血細胞移植には致死的合併症が生じることがあり合併症管理は重要な課題である。移植関連血栓性微小血管障害(TA-TMA)は致死率の高い移植関連合併症の1つである。TA-TMAはHCTの10-35% に発生するとされ、前処置、重症感染症、GVHD、カルシニューリン阻害薬などのさまざまな因子により血管内皮障害が生じ、TA-TMAに至ると考えられている。病態完成後の治癒は極めて困難で発症後致死率は60-90%と極めて高く、HCT後に最も克服すべき合併症である。確立した治療法はないが、補体経路調節障害が関与するものにC5モノクローナル抗体であるエクリズマブの有効性が近年報告されている。TA-TMA発症には、血栓性微小血管障害や補体活性に関連する変異を有する患者に何らかの環境要因が加わることが必要とされている。遺伝子異常を有していても通常生活では問題とならず、大量化学療法やHCTのストレス下で血管内皮障害が生じTA-TMAに至ると考えられる。本研究では、TA-TMAを来した患者DNAを用いて、血栓性微小血管障害を来す病因となりうる17の遺伝子解析を行い、日本人のTA-TMAにおける遺伝子変異型や頻度を明らかにすることを目的とする。その結果、将来的には移植前に遺伝的スクリーニングを行い、TA-TMA発症高リスク群ではGVHD予防においてカルシニューリン阻害薬使用回避やTA-TMA発症後の臓器障害に至る前にエクリズマブ投与を行うなどの早期介入が可能となり生存率が向上する。臨床遺伝学的な視点に加え、臨床現場への還元も可能となる大変有意義な研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移植関連血栓性微小血管障害(TA-TMA)を対象とした血栓性微小血管障害の病因として含まれる17の遺伝子(CFH, CFHR1, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CD55, CD59, CD46, CFI, CFB, CFP, C5, ADAMTS13, CFD, C3, C4BPA, THBD)について次世代シーケンサーで解析を行い、TA-TMA発症例で変異体陽性例は65%であり未発症例の9%と比較して有意に高率であることが示された。本研究では、2017年より宮崎大学と包括連携協定を締結したかずさDNA研究所との共同研究によりエクソン、隣接するイントロン、非翻訳領域について特定領域を濃縮する均等化ターゲットキャプチャー技術を用いてTA-TMA病因とされる17遺伝子について、TA-TMA疾患パネルの作製が既に完了している。このパネルを用いて、移植前に採取した寛解期末梢血もしくは骨髄液のゲノムDNAを使用し検討を行った。 TA-TMAをきたした患者検体18例(宮崎大学、近畿大学、兵庫県立こども病院、九州がんセンター)とコントロール検体16例を、かずさDNA研究所で次世代シーケンサーHiSeq2500を使用し、NextGENeソフトウエアを用いて解析した。すべての変異体からSNPを除外しコーディング変異、フレームシフト、スプライシングバリアントを抽出するところまで終了した。TA-TMA 18検体中12検体に病的変異、もしくは文献上に報告がある変異を認めた。また、18検体中4検体には、文献の報告はないが、低頻度MAF(major allele frequency)の変異を認めた。さらに症例数を拡大して統計解析も行いながら臨床的意義があるかの検討を行っている
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Strategy for Future Research Activity |
検体収集が遅れており、協力施設からの検体送付の依頼を行うとともに、臨床情報として年齢、性別、病名、ドナー型、移植細胞ソース、HLAタイピング、前処置、GVHDを収集し、遺伝子変異体情報と統合することで新たな発症予測スコアリングの構築を行う予定としている。何らかの形で、有意差を見出し、既報告にない新規変異や低頻度MAFが日本人のTA-TMA群で同定できれば、造血幹細胞移植をする際の日本人特有のリスク因子として提言でき、非常に有意義な報告になると考えられる。
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Causes of Carryover |
協力施設からの検体収集が遅滞しており、TA-TMAを対象とした血栓性微小血管障害の病因として含まれる17の遺伝子(CFH, CFHR1, CFHR3, CFHR4, CFHR5, CD55, CD59, CD46, CFI, CFB, CFP, C5, ADAMTS13, CFD, C3, C4BPA, THBD)について次世代シーケンサーでの解析を行っていないため、その費用を使用していないこと、コロナ感染症の影響で学会参加などできなかったため旅費の使用がなかったことから、次年度使用額が生じた。
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