2018 Fiscal Year Research-status Report
ダイアモンド・ブラックファン貧血のリボソームタンパク質リン酸化による造血制御解析
Project/Area Number |
18K15680
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
鳥原 英嗣 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50757218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダイアモンド・ブラックファン貧血 / 先天性貧血 / ダイヤモンド・ブラックファン貧血 / 疾患モデル / リン酸化 / リボソームタンパク質 / ゼブラフィッシュ / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
Diamond-Blackfan 貧血(DBA)は、赤芽球への分化異常によって引き起こされる先天性疾患である。代表的な原因遺伝子はリボソームタンパク質(RP)をコードするRPS19である。興味深いことにRPS19以外のRP遺伝子の変異を持つDBA患者も数多く報告されており、全患者の約半数がRP遺伝子に変異を持つ。DBA発症機序として現在最も有力なのは、RP遺伝子の変異によりガン抑制遺伝子p53が活性化し、その経路が関与するというものである。しかし、疾患の分子機構については不明な点が多く、RP遺伝子に変異を持たない患者に関しては原因が不明なままである。 また、全身に存在するリボソームの異常が、なぜ器官特異的な表現型を示すのか疑問であるが、それに対しては、各組織を構成する細胞種によってRP変異への感受性が異なるからだと考えている。そのため、様々な組織を比較する必要があり、細胞レベルではなく個体レベルでの解析が必須である。そこでモデル生物のゼブラフィッシュを用いた予備検討を行なった結果、RPS19のリン酸化が赤血球造血に関与する可能性が示唆された。 そこで本研究では、ゼブラフィッシュを用いた独自のリン酸化解析システムにより、RPのリン酸化状態の違いによる造血への影響を解析する。また、以前培養細胞を用いてRPS19がリン酸化酵素PIM1によって強くリン酸化されることを明らかにしていることから、ゼブラフィッシュ pim1の発現を抑制し造血への影響を解析する。これらによりRPのリン酸化を介した赤血球造血機構を明らかにし、DBAの分子機構として新たな知見を得ることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゼブラフィッシュpim1に対するモルフォリノアンチセンスオリゴ(MO)を作成し、受精卵に微量注入した。その結果、受精後24時間で脳の形成異常、体軸の屈曲といった表現型が得られた。さらに受精後48時間の胚をヘモグロビン染色で評価したところ、発現抑制胚で赤血球数の減少を認め、造血に異常が見られた。そこで次にCRISPR/Cas9システムを用いたpim1ノックアウトゼブラフィッシュの作成を試み、変異体を得た。この変異体もMOによる発現抑制胚同様、脳形成に異常が見られ、赤血球数が減少した。以上から、pim1が赤血球造血に関与していることが示唆された。 リン酸化が関与する赤血球造血因子の探索については、一部着手している。しかし、上記の発現抑制胚および変異体の作成、検証実験に時間を要したため、若干遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ゼブラフィッシュのrps19恒常的リン酸化モデルおよび恒常的非リン酸化モデルを用い、リン酸化が関与する赤血球造血因子の探索を行う。 2.rps19リン酸化酵素pim1の発現抑制胚および変異体を用い、リン酸化が関与する赤血球造血因子の探索を行う。
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