2018 Fiscal Year Research-status Report
Schaaf-Yang症候群の発症メカニズム解明と治療法開発
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18K15682
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
根岸 豊 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (40798344)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Schaaf-Yang症候群 / MAGEL2 / Prader-Willi症候群 / CRISPR/Cas9 / モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はSchaaf-Yang症候群の臨床像、発症メカニズムを解明することである。本疾患はMAGEL2の短縮型変異が原因とされているが、我々は短縮型変異が単純な機能喪失ではなく、機能亢進型変異であるとの仮説を立てた。 まず、患者で保存されているMagel2遺伝子N末端側(1311塩基)のcDNAと、Magel2遺伝子全長cDNAをマウスの神経芽細胞腫由来であるNeuro2aに遺伝子導入し、MTSアッセイにて細胞毒性を細胞レベルで比較したが、両群に差は認められず、神経細胞に対する直接的な毒性は認めなかった。 次に、患者で同定された変異部位に相当する1716番付近をターゲットとしたCRISPRベクターを作成し、マウス受精卵に顕微注入を行い、ノックアウト(KO)マウスの作成を試みた。その結果、690番~1924番の235塩基欠失をフレームシフトで有するKOマウスの作成に成功し、引き続き実験を行った。変異を有する父親と野生型の母親を交配し、84匹の仔が出生し、うち29匹(34.5%)に変異を認めた。変異を有する母親と野生型の父親を交配し、23匹の仔が出生し、うち12匹(52.1%)が変異を認めた。このことから、父由来の変異を有するマウスは、一定の割合で胎内死亡することが推察された。父由来の変異マウスの脳からRNAを抽出し、RT-PCRを実施し、変異mRNAのみが発現していることを確認した。一方、母由来の変異マウスの脳では、正常mRNAのみ発現していた。このことから変異マウスでもゲノムインプリンティングが保たれていることが確認された。しかし、父由来の変異マウスでは、ヒトで報告されているような、哺乳不良・肥満・関節拘縮などは明らかでなかった。そこで、現在、長期観察における表現型の観察を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに報告されたMagel2のKOマウスはMagel2全域を欠失している機能喪失マウスである。それに対して、我々はCRISPR/Cas9システムを用いてMagel2遺伝子の中間部分に欠失によるフレームシフトを有するマウスの作成を試みた。世界に先駆けて、ヒト患者のモデルとなるフレームシフト変異によるKO変異マウスの作成に成功したことは、Schaaf-Yang症候群の病態解明に重要な役割を果たすことが期待できる。よって、現時点で本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
変異Magel2が機能獲得型変異として神経毒性を示すのであれば、変異型転写産物をアンチセンス核酸で抑制することが治療に繋がる可能性がある。今後、KOマウスの表現型を長期的に精査し、アンチセンス核酸療法などの有効性についての実験を進める予定である。 さらに、日本人患者の集積を進め、遺伝型表現型連関を明らかにし、MAGEL2変異症候群の臨床症状の全貌の解明を予定している。
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Causes of Carryover |
国内における学会発表について、旅費を用いずに参加することができたため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は次年度における旅費として使用する予定である。
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[Presentation] Schaaf-Yang症候群の臨床像検討とトランスジェニックマウスを用いた病態解析2018
Author(s)
根岸豊, 家田大輔, 中村勇治, 堀いくみ, 服部文子, 野崎靖之, 小牧宏文, 遠山潤, 長崎啓佑, 多田弘子, 大石久史, 齋藤伸治
Organizer
第60回日本小児神経学会学術集会