2018 Fiscal Year Research-status Report
メンデル遺伝病に対する無侵襲出生前遺伝学的検査の臨床応用
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18K15690
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
野田 佳照 藤田医科大学, 医学部, 助教 (10767338)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 無侵襲的出生前遺伝学的検査 / cell-free DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
出生前診断において、妊婦の採血による無侵襲的出生前遺伝学的検査(noninvasive prenatal testing:NIPT)が注目されている 。NIPTとは、母体血漿中に含まれている僅かな胎児由来のcell-free DNA(cfDNA)を使用して遺伝学的検査を行う方法であり、日本国内では、21番染色体トリソミーなどの染色体異数性の診断のみが臨床応用されている。現時点で、メンデル遺伝性疾患への 応用はほとんど進んでいないが、その主な原因として、母親と胎児由来ゲノムDNAを高精度に区別することができないためと考えられる。そこで本研究では、母親と胎児由来ゲノムDNAを高精度に区別する手法を開発するとともに、重篤なメンデル遺伝性疾患保因者夫婦に対し臨床応用が可能な非侵襲性出生前診断法の確立を目的とした。 当該年度に実施した研究成果は以下の通りである。母体血漿中に含まれる胎児由来cfDNAの割合は10%前後であるため、従来のサンガーシーケンスでは検出が困難であることが予想される。そのため次世代シークエンサー(NGS)を用いて該当する変異箇所をdeep sequenceし、低頻度のアリル変異の検出方法を確立する。一般的にNGSのエラー率は0.1%程とされており、該当の変異箇所の前後のエラー率と比較するこ とで、変異の有無を明らかにすることができると考えている。胎児由来cfDNAは母体由来cfDNAと比較してサイズの短いことが知られているため、サイズ分画によりcfDNAを濃縮する。申請者が行った予備的実験では、サイズ分画前には15.3%だったcffDNAの割合が、サイズ分画後には36.5%に増加することが確認された (N=3) 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期に設定した研究実施計画通りに研究が進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
検査精度の向上のために、疾患の遺伝子変異のPCRと同時に、複数のcommon SNPを含む領域をmultiplex PCRで増幅後にシークエンスし、全リード数から各SNPのマイナーアリル頻度 (minor allele frequency = MAF)の割合を算出するとともに、各SNP の遺伝子型が母親:胎児=AB:ABと母親:胎児=AB:AAとなるMAFの閾値を決定する。その後、原因遺伝子変異のMAFの割合が、母親: 胎児=AB:ABと母親:胎児=AB:AAのどちらのグループに属するか決定し、母親の遺伝子変異が胎児に遺伝しているかを決定する。 本研究では常染色体劣性遺伝、もしくはX連鎖性疾患の保因者妊婦の血漿を同時に収集し、cfDNAを抽出後に、tailed PCRにより common SNP領域と原因遺伝子変異の領域を増幅し、NGSで解析する。また、出産に至った児の表現型、もしくは遺伝子型からNIP Tの結果について判定する。
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Causes of Carryover |
常染色体劣性遺伝やX連鎖性疾患で、母親が同じ原因遺伝子変異を有している場合は、胎児における変異の同定は非常に困難であることが予想される。これまでの報告で母体血漿中に含まれるcfDNAのサイズ分布を調べると、胎児由来cfDNAでは母親由来cfDNAよりもサイズが小さいことが示されているためこの特徴を利用し、母体血漿から抽出したcfDNAから、胎児由来cfDNAを濃縮し、モザイク率を高めてからdeep sequenceすることにより、胎児の遺伝子変異の有無を明らかにする。一方、cfDNAは断片化が進んでおり、cfDNAやcfDNA由来のPCR産物を断片化し、アダプター配列のライゲーションを行うのは難しい。そのためPCRプライマーの5’末端にシーケンス用のアダプターを付加したtailed PCRを用いて、目的遺伝子領域の増幅を行う。アダプター配列が付加されたPCR産物をNGSでdeep sequenceし、変異箇所を数万回繰り返し読むことで低頻度モザイクの検出を試みる。
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