2018 Fiscal Year Research-status Report
新生児低酸素性虚血性脳症におけるLOX-1の分子動態の解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
18K15693
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
赤松 智久 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 流動研究員 (10737985)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新生児低酸素性虚血性脳症 / LOX-1 / ミクログリア / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後7日齢のSDラットにおいてnHIE群および対照群、抗LOX-1中和抗体治療群の3群を作成し、海馬・視床レベルの凍結切片を作成した。抗MAP2抗体(神経細胞マーカー)による免疫染色を用いた梗塞面積の評価およびTUNEL染色によるによるアポトーシス評価によって、抗LOX-1中和抗体によって、nHIEの梗塞形成および神経細胞アポトーシスが抑制されることを確認した。 海馬全体のIba1染色像を観察し、その形態からameboid型(活性型)とramified型(平常型)を識別し、それぞれの細胞数をカウントした。また、同時にDAPI染色により総細胞数をカウントし、ミクログリア活性化へのLOX-1の関与を。海馬におけるameboidミクログリア/全細胞比に関しては、低酸素虚血負荷後24時間と7日後において抗LOX-1中和抗体治療群でHIE群に比べて、ameboidミクログリアが有意に減少していた。 次に、抗Iba1抗体と抗Ki67抗体の二重染色を行い、海馬全体を観察し、Iba1陽性細胞数、Iba1/Ki67陽性細胞数をカウントし、Iba1ミクログリア増殖に関するLOX-1の関与を検討した。低酸素虚血負荷後48時間、72時間において抗LOX-1中和抗体治療群でnHIE群に比べて優位にKi67陽性ミクログリア/ミクログリア比が減少していた。さらに、低酸素虚血負荷7日後には、海馬におけるミクログリア/全細胞比が抗LOX-1中和抗体群でnHIE群に比べて優位に減少していた。 さらに、nHIEの活性型ミクログリアのM1/M2極性とLOX-1との関連を検討した。LOX-1、Iba1、TNF-α(M1マーカー)が共発現しており、LOX-1がM1ミクログリアに発現していることは確認できたが、M2マーカーに対する免疫染色が成功せず、M1/M2極性については評価が行えなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以前の研究においてはラットの麻酔薬にジエチルエーテルを使用していたが、本研究からはイソフルランに変更した。そのため、nHIEモデルラットを安定して作成することに時間を要した。また、本研究の実施後に低酸素チャンバーの故障が起こり、新たなチャンバーを作成し、実験系を安定させることにも時間を要した。 各群4-9匹において低酸素虚血負荷後24、48、72時間、7日の切片において海馬全体での各抗体陽性細胞数を目視にてカウントすることが、予定よりも時間を要してしまった。 本研究のin vivo実験は、主に免疫染色による評価を用いたものであるが、増殖マーカーである抗Ki67抗体、ミクログリアM1,M2マーカーに対する抗体がうまく反応せず、多数の抗体において染色条件を変化させての検討が必要とった。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクログリア活性に対するLOX-1の関与に関しては、負荷後24時間と7日後に有意ではあるが、軽度の関与としか言えない結果となっている。これには、ミクログリア形態の変化(活性化)を検者の目視に頼っていることが影響している可能性がある。細胞形態を解析するソフトの利用により、より客観的にミクログリア活性化を評価する方法採用し、もう一度評価しなおす必要があると考える。 M1/M2極性とLOX-1の関連の検討については、M1,M2マーカーに対する抗体を利用した免疫染色が難しい状況である。原因としては、マーカーの発現量が微量である可能性と、有効な免疫反応を有する抗体がないということが考えられる。今後は、in situ hybridizationによるM1/M2極性の評価を行うことを計画している。 同時に、in vivo実験では、各群の海馬のmRNAを採取しており、今後定量PCRによって、ミクログリアのサイトカイン・ケモカイン産生に対する抗LOX-1中和抗体治療の効果の評価を行う。 上記、in vivo実験と同時に、SDラット初代培養ミクログリアを用いて、酸素グルコース欠乏負荷(OGD)を行う、in vitro実験を進めていく予定である。
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