2018 Fiscal Year Research-status Report
Genetic basis and molecular mechanism of anti-NMDAR encephalitis in early infant.
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18K15716
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 良行 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (20723290)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | NMDA受容体脳炎 / 若年発症 / IRAK4欠損症 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳児期発症の抗NMDAR脳炎の対象患者にエクソーム解析を行い、IRAK4遺伝子の複合ヘテロ接合性変異を同定した。本症例に関しては2018年度の日本小児神経学会学術集会において発表を行った。まず診断の妥当性について検討する目的で患者末梢血でのIRAK4のmRNA発現を検討し、対照群の約2/3程度に減少していることが判明した。次に患者末梢血をリンパ球分画(CD4、CD8、CD19、CD14)に分けてIRAK4蛋白の発現を検討しIRAK4の蛋白の発現を認めなかったことから、IRAK4蛋白がT細胞、B細胞、単球のいずれにおいても欠損していることが判明した。並行して、患者由来SV-40不死化線維芽細胞を樹立し、それを用いて、種々のTLRリガンドによる刺激を行い、反応性に産生されるIL-6を検討した。本症例では、pICとTNF-α刺激以外のTLRリガンドではIL-6の産生障害を認めた。pICはTLR3のリガンドであり、IRAK4を介さない経路による刺激のため、阻害されておらずIL-6を産生していた。またTNFαは別の経路を介してIL-6が産生されるので阻害されていなかった。これらの結果から本症例の細胞ではIRAK4を経由したIL-6の産生能が阻害されていることが判明した。次にCRISPR/Cas9によりIRAK4を欠損させてHEK293T細胞にプラスミドを導入し、変異allelesの蛋白発現をウエスタンブロットで確認、検討した。本症例の変異であるR12P, Y10CfsX変異体に加えて、既報の変異であるR12C, Q293Xでは、いずれも蛋白発現が障害されていることが判明した。続いてHEK293T細胞にプラスミドを導入し、IL-18刺激によるNFkB転写活性をレポーターアッセイで検討したところ、野生型に比べて本症例の変異は両方ともNFkBが著しく阻害されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳児期発症抗NMDAR脳炎およびIRAK4欠損症は、いずれも比較的頻度の低い疾患群である。しかし実際の診療現場では、診断に難渋することが多く、診断に至るまでの過程、宿主要因の存在の検討は重要事項である。現在までに分子生物学的検討によるIRAK4欠損症の診断の妥当性に関する検討はin viro解析、ex vivo解析ともに順調に進展しているが、自然免疫異常であるIRAK4欠損症、MyD88欠損症患者は希少疾患であることから血清中の抗NMDAR抗体測定の解析は進行にやや遅滞をきたしている。
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Strategy for Future Research Activity |
IRAK4欠損症患者、MyD88欠損症患者における抗NMDAR抗体の網羅的測定、および若年発症抗NMDAR脳炎患者の網羅的遺伝子解析を進めていく。具体的にはIRAK4欠損症、MyD88欠損症と抗NMDAR脳炎との関連性の検討には、希少疾患の症例集積に努める必要があると考えている。並行して若年発症の抗NMDAR脳炎患者、具体的には5歳未満発症の症例に関してIRAK4やTLRシグナル伝達に関与する遺伝子群を中心にエクソーム解析を用いた網羅的解析を考慮しており、こちらに関しても症例の集積に努める必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は予定していた海外の学会参加を行わなかったため、旅費が予定使用額に至らなかった。また、研究の進行状況として、IRAK4欠損症患者における分子生物学的検討による診断の妥当性に関しての解析はおおむね順調に進行しているが、エクソーム解析を用いた網羅的遺伝子解析を行っていない状況である。次年度にはIRAK4欠損症患者における抗NMDAR抗体の網羅的測定、並行して若年発症の抗NMDAR脳炎患者におけるIRAK4やTLRシグナル伝達に関与する先天性免疫不全症の原因遺伝子群を中心にエクソーム解析を用いた網羅的解析を計画している。これらの網羅的解析を行うにあたり、解析に要する費用、消耗品費やデータ処理に関連した設備備品費に本年度より多額の費用を要することが考えられ、残額に関しては、これらに使用する計画となっている。
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Research Products
(1 results)