2020 Fiscal Year Research-status Report
Cell fate determination through transcriptional activation by BET family proteins in preimplantation embryos
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18K15738
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Research Institution | Osama Woman's and Children's Hospital |
Principal Investigator |
爪 麻美 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 病因病態部門, 研究技術員 (70711026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マウス / 着床前胚 / エピブラスト / BET |
Outline of Annual Research Achievements |
BETファミリータンパク質(BET)は、BRD2,BRD3,BRD4およびBRDTの4つのタンパク質で構成され、ブロモドメインを介してアセチル化されたヒストンに特異的に結合し、転写を制御することが知られている。本研究は、マウス着床前胚におけるBETの役割を明らかにすることを目的としている。 前年度までに、BETはエピブラスト系譜の形成に働くこと、胚盤胞におけるBET標的遺伝子とSTAT3標的遺伝子を網羅的に同定して比較することで、BET標的遺伝子の一部はSTAT3経路を介している可能性を示唆していた。そこで本年度は、BETとSTAT3の両方の制御を受ける110遺伝子がどのような特徴を持っているかを調べるために、Gene Ontology (GO)解析を行った。その結果、BETとSTAT3の両方の制御を受ける遺伝子群では、幹細胞の維持に関わるGO termが高頻度に抽出された。さらに、STAT3の制御は受けるがBETの制御は受けない遺伝子群では、幹細胞の維持に関わるGO termは抽出されなかった。これらの結果から、STAT3単独ではなく、BETが協調して働いた場合、幹細胞の特徴を持つエピブラスト形成に関わることが示唆された。 さらに、前年度の結果から、BETの中でもBrd4がエピブラスト形成に必要であることが示されていたので、Brd4欠損マウス胚を用いて、より詳細な表現型解析を行った。その結果、NANOG陽性のエピブラスト細胞は、4.5日目胚では激減していたが、3.5日目胚では減少していなかった。一方、BET機能阻害剤で処理すると、Brd4ホモ変異胚よりもより早い発生段階からNANOG陽性のエピブラスト細胞は消失していた。これらの結果から、エピブラスト形成には、Brd4が主に働いているものの、Brd4以外の他のBET(Brd2やBrd3)も重複して働いている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GO解析では、BETとSTAT3の両因子で制御される遺伝子群において、エピブラスト形成と関連するtermを抽出できた。また、BET阻害剤を用いた解析やBrd4欠損マウス胚の表現型解析をさらに進め、論文作成のためのデータを集めることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から、着床前胚におけるエピブラスト形成には、BRD4が主に働いているものの、他のBETも重複して働いていることが示唆された。そこで、BRD4の次に高い発現を示すBRD2の機能にも着目して、解析を進める。具体的には、Brd2とBrd4のダブルノックアウトマウスをCRISPR-Cas9システムを用いて作製し、胚の表現型解析を行い、BET機能阻害剤で見られた表現型(NANOGタンパク質の発現消失)と一致するかについて調べる。Brd2遺伝子とBrd4遺伝子は、同じ17番染色体上の近傍(1.7 Mb)に位置しているため、両変異体の組み換え体を得ることが難しいと想定される。そこで、Brd2ヘテロマウスを交配して得られた受精卵にBrd4がノックアウトされるようにゲノム編集を行い、ライン化をするか、二重ホモ変異胚をE3.5まで培養する方法を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
実験に用いたいくつかの試薬やディスポーザブル製品(解剖用ディッシュなど)は効率的に使用することができたため、次年度利用額が生じた。次年度は引き続き、マウス購入費、阻害剤試薬、ゲノム編集などに必要な生化学・分子生物学試薬、抗体などの組織学用試薬、ディスポーザブル製品購入費、成果発表費、等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)