2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K15743
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
油井 史郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (00383886)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸上皮再生機構 / 胎児型上皮への運命転換 / I型コラーゲン / 腸上皮オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、腸上皮が傷害後に胎児腸上皮細胞に類似した形質に変化するという従来の想定を大きく超えた腸上皮細胞の可塑性を明らかにした。その機序として、腸管傷害時に間質に沈着するI型コラーゲンをがFAK/pSrcを活性化し、これが転写因子であるYAP/TAZの活性を誘導するという分子経路を明らかにした。 I型コラーゲンの腸上皮細胞に与える影響については、腸上皮細胞をI型コラーゲン内に包埋して培養する申請者独自の腸上皮オルガノイド培養法を用いてより限定的に評価・解析した。ラミニンを主体とするマトリゲル内で培養される世界標準の腸上皮オルガノイドと比較して、I型コラーゲン内で培養されている腸上皮オルガノイドは、まずその形が球状である点で、胎児腸上皮オルガノイドに類似していた。さらには、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析でも、両者には高い相同性を認めた。 I型コラーゲンゲル内における腸上皮の増殖は転写因子YAP/TAZのノックアウトにより完全に阻害されるなどのIn Vitroの結果、および、FAK阻害剤やYAP/TAZのノックアウトにより個体レベルで腸上皮再生と胎児型細胞への形質転換が阻害されるなどのIn Vivoの結果から、上記シグナル経路の関与が明らかとなった。 本研究は、再生能力の高いことがよく知られていた腸上皮の再生の仕組みを、想定を超えた可塑性から明らかにした画期的な成果であるとともに、腸上皮細胞の発生上の時相を人為的にコントロールする未来型技術開発の基盤となる知見を提示するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の予定通り順調に経過し、成果の一部はすでに論文として報告した(Yui S et al, 2018, Cell Stem Cell)。当該論文は、Web of Scienceで高被引用論文に認定されるなどその成果に大きな注目が集まっている。また本基盤研究の成果に立脚した新規の研究課題が、日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実現拠点ネットワークプログラム(幹細胞・再生医学イノベーション創出プログラム)に採択されるなど、成果は多いに発展している。本研究は、腸上皮発生研究で世界的に主導的な役割を果たしているデンマーク・コペンハーゲン大学のKim Jensen教授、YAP/TAZ研究の世界的リーダーであるイタリア・パドア大学のStefano Piccoloらとの国際的な共同研究の枠組みの構築にも多いに貢献し、今後のますますの発展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最も重要な点は、遺伝子操作を行わないでも、細胞運命を大きく変化させうること、さらには細胞の発生上の時相すらもコントロールできる基盤技術を提示している点である。この運命転換は、腸上皮の再生のメカニズムを理解する上でも必須であることから、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の病態理解にも多いに活用できる知見を提示している点も非常に重要である。 今後は、成体腸を胎児腸上皮細胞に完全にリプログラムしうる技術基盤の確立を目指す研究を推進する予定である。この発展型研究企画は現在、日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実現拠点ネットワークプログラム(幹細胞・再生医学イノベーション創出プログラム)課題に採択されており、遺伝子操作を使用しない細胞の運命転換技術という未来型技術基盤の確立に役立てていく予定である。
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Causes of Carryover |
理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。 使用計画: 検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Ubiquitin D is up-regulated by synergy of Notch signalling and TNF-α in the inflamed intestinal epithelia of IBD patients2019
Author(s)
Ami Kawamoto, Sayaka Nagata, Sho Anzai, Junichi Takahashi, Mao Kawai, Minami Hama, Daichi Nogawa, Kohei Yamamoto, Reiko Kuno, Kohei Suzuki, Hiromichi Shimizu, Yui Hiraguri, Shiro Yui, Shigeru Ohshima, Kiichiro Tsuchiya, Tetsuya Nakamura, Kazuo Ohtsuka, Masanobu Kitagawa, Ryuichi Okamoto, Mamoru Watanabe
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Journal Title
Journal of Crohn and Colitis
Volume: 13(4)
Pages: 495-509
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Single cell analysis of Crohn's disease patient-derived small intestinal organoids reveals disease activity-dependent modification of stem cell properties2018
Author(s)
Kohei Suzuki, Tatsuro Murano, Hiromichi Shimizu, Go Ito, Toru Nakata, Ami Kawamoto, Junichi Takahashi, Minami Hama, Sayaka Nagata, Yui Hiraguri, Shiro Yui, Kiichiro Tsuchiya, Tetsuya Nakamura, Mamoru Watanabe, Ryuichi Okamoto et al
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Journal Title
Journal of Gastroenterology
Volume: 53(9)
Pages: 1035-1047
DOI
Peer Reviewed
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