2018 Fiscal Year Research-status Report
TGF-βⅡ型受容体機能欠損大腸癌における細胞死機構の解明
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18K15749
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
辻井 芳樹 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80795170)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | TGF-β / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
Transforming Growth Factor beta (TGF-β)は広範な組織で産生され、細胞の増殖や分化などを調節することで様々な生命現象に関わる。TGF-βは正常組織や早期癌では細胞増殖を抑制するが、進行癌や転移性癌では腫瘍促進に働く傾向があることが知られている。しかし、その作用転換(TGF-β switch)の機序に関していまだ詳細は不明であり、本研究は、TGF-β-RⅡが機能欠損した大腸癌におけるTGF-βの役割について検討し、TGF-β switchの機序を明らかにすることを目的とする。 1.大腸癌細胞株においてTGF-βが細胞増殖に及ぼす影響を調べるため、TGF-β-RⅡが正常の細胞株(LS513、HT29、SW480、SW620)と機能欠損した細胞株(HCT116, Lovo、LS174T)それぞれにおいてTGF-βの産生分泌を確認した上で、添加する実験と抑制する実験を行い、細胞数の増減とp53、p21の発現について調べた。さらにアポトーシスについて評価し、TGF-β-R機能の有無によるTGF-βの働きの相違を確認した。 2.受容体の状態との関連についての検討として、LS513において、siRNAを用いてTGF-β-RⅡを抑制し、HCT116と類似の表現型が見られるかどうかを検証した。さらに、TGF-β-RⅠとの関与を検討するために、HCT116でTGF-β-RⅠの抑制とTGF-β-RⅠ阻害剤の投与を行い、細胞数の増減とp53、p21の発現を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養細胞株を用いたin vitroでの検討はおおむね順調に進行している。ただ、抑制実験についてはshRNAの導入がうまくいかず、またCRISPR-Cas9システムを用いた抑制が未遂のため、今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
TGF-β-RⅡ機能欠損下でTGF-βがp53を抑制することの検証を行う。方法としては、HCT116あるいはLovoでTGF-βを強制発現させ、細胞数の増減とp53の発現、アポトーシスについて評価する。また、ヒト臨床検体を用いた解析を進める。すなわち、MSI大腸癌とMSS大腸癌の切除組織検体を用いて免疫染色法によりTGF-βと各受容体、p53の発現量を比較検討し、vitroで得られた結果とのする。組織中の発現量と血清濃度の相関性と腫瘍の悪性度(転移や予後との関連)を明らかにする。
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