2018 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食が胃MALTリンパ腫の発生進展に与える影響とその機構の解明
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18K15750
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渡邉 大輔 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (40595609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Helicobacter suis / 胃MALTリンパ腫 / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満が、がんの死亡率上昇のリスクとなることはよく知られている。 その機序には、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカイン(レプチン)が関与しているとされ、肥満(高脂肪食摂取)による血中レプチンの上昇が、JAK/STAT3シグナルを増強し、がんの発生・進展を促すと考えられている。 一方で、リンパ球はレプチンによって刺激されると、INF-γが過剰に産生され、それに伴い、リンパ球は増殖する。 我々は、これまでに、Helicobacter suis (H. suis)感染胃MALTリンパ腫マウスモデルを用いて、胃MALTリンパ腫の病態解析を行ってきた。本モデルを用いた検討において、胃MALT リンパ腫の発生・進展には、B 細胞由来のIFN-γによる刺激が重要であることがわかった(Mucosal Immunol 2015;8:279-95)。 そこで、本課題では、高脂肪食摂取に伴う高レプチン血症が、胃MALTリンパ腫の発生・進展に影響を与えるかを検証し、さらには、その発生・進展メカニズムの解明を目指すこととした。具体的には、①レプチン刺激によってヒトB 細胞悪性リンパ腫細胞のレプチン受容体(Ob-R)遺伝子の発現が上昇するか、及び、IFN-γ産生が促されるかを評価し、②H. suis感染マウス胃MALTリンパ腫モデルを用いて、高脂肪食投与が胃MALTリンパ腫の発生を促すかを評価し、③ob/ob(レプチン変異)及びdb/db(レプチン受容体変異)マウスでは、胃MALTリンパ腫の発生が抑制されるか(レプチン-Ob-R結合を介したシグナル経路の遮断の影響)を評価した。 以上、本研究計画の完遂によって、持続的な高脂肪食摂取がMALTリンパ腫の増悪につながること、及び、その病態メカニズムを明らかにすることが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度内に、①びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株(Toledo)を用いた細胞実験、及び、②H. suis感染マウス胃MALTリンパ腫モデルによる高脂肪食摂取と胃MALTリンパ腫の発生・進展の関連に関する検討、③同モデルによるレプチン-Ob-R結合を介したシグナル経路の遮断と胃MALTリンパ腫の発生・進展の関連に関する検討を行うことができた。 ①に関しては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞株(Toledo)を、ヒト組み換え体レプチン(100ng/ml)を添加した培地で24時間または48時間、培養し、Ob-R・IFN-γ遺伝子の発現量を、リアルタイムPCR法を用いて評価した。解析の結果は、Ob-Ra/Ob-Rb遺伝子の発現量は、培養後24時間及び48時間ともに有意差をもって対照群より高値であった。同様に、INF-γ遺伝子の発現量に関しても解析したところ、培養後24時間及び48時間ともに有意差をもって対照群より高値であった。さらに、INF-γの産生量を、ELISA法を用いて検討したところ、レプチンで刺激培養した群のIFN-γ産生量は、対照群に比べて高値であった。 ②に関しては、H. suis感染マウスから採取した胃粘膜ホモジネート液を、C57BL/6Jマウスに経口投与し、続いて、高脂肪飼料で飼育した。H. suis 感染より3か月後、胃MALTリンパ腫を含めた全胃を採取し、病理学的評価を行うとともに、レプチン・Ob-R・IFN-g遺伝子の発現量を評価している。 ③に関しては、ob/obマウス・db/dbマウスに対して、H. suis 感染マウスから採取した胃粘膜ホモジネート液を経口投与した。続いて、項目②と同様に、H. suis 感染から3か月の時点で、胃MALTリンパ腫を含めた全胃を採取し、病理学的評価を行うとともに、レプチン・Ob-R・IFN-γ遺伝子の発現量を評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題では、高脂肪食摂取が胃MALTリンパ腫の発生と進展に与える影響を明らかにし、持続的な高脂肪食摂取がMALTリンパ腫の増悪につながること、つまり、食生活習慣の改善によるMALTリンパ腫の進展抑制の可能性を示すことを目的とした。 本課題を明らかにするために、本申請では、上記の項目①~③に関する研究計画を立案し、現在までおおむね順調に研究計画を遂行できている。 項目①に関しては、平成30年度内にすべての計画が終了し、in vitroの解析において、レプチンがリンパ腫細胞のOb-R遺伝子の発現を誘導し、さらにはINF-γの産生を促すことを明らかにすることができた。 項目②③に関しては、動物実験は終了しており、摘出した胃の病理標本の作製と摘出胃からのmRNA抽出、定量PCRも既に済んでおり、現在は、データの整理と結果の解析を進めている。 本年度の研究の推進方策に関しては、上述の実験結果を解析・検討し、必要に応じて補足実験を行い、結果の報告を行っていくことを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度は、計画の軽度の遅延のため、補足実験に必要な定量PCRのプライマーを購入していない。次年度は、本年度の残額を利用して、プライマーの購入費用とする予定である。
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