2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代糖鎖連結光感受性物質を用いた新規光線力学的医療の開発
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18K15758
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
西江 裕忠 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00812174)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光線力学的治療 / 糖鎖連結光感受性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会を迎える本邦では、低侵襲癌治療として光線力学的療法 (PDT)の開発が期待されている。既存PDTの抗腫瘍効果および腫瘍集積性を高めるべく、究極の生体適合分子である「糖」が癌細胞へ高効率に取り込まれる性質を応用し糖鎖連結光感受性物質を開発してきた。グルコース、 マンノース、マルトトリオースなどの単糖・多糖結合光感受性物質による優れた抗腫瘍効果、抗腫瘍免疫誘導能および蛍光腫瘍イメージング効果を報告してきた。さらに改良を加え、不安定であった糖鎖部分をアセチル基で保護することにより、より安定した抗腫瘍効果を発揮しうる新規糖鎖連結光感受性物質の開発(Aクロリン)に成功した。平成30年度では新規開発光感受性物質を用いて下記実験を行い評価した。 各種癌細胞株(ヒト食道癌細胞株、ヒト胃癌細胞株、ヒト大腸癌細胞株)に濃度別のAクロリンを投与し、4時間共培養を行う。その後、660nmのLEDライト(Optocode社製)を照射しPDTを施行。24時間後にCCK-8、マイクロプレートリーダで生存細胞を測定しIC50を算出し、臨床で使用されているTalaporfin(TS)とPDT効果を比較検討した。蛍光マイクロプレートリーダ (Gemini EM、 Molecular Devices)、FACS Cant II (BD Biosciences)を用いて食道癌、胃癌、大腸癌細胞への薬剤取り込みを測定し、癌細胞特異性、選択性を解析し、Talaporfinと比較検討した。共焦点レーザー顕微鏡 (Nikon A1 confocal system) を用いて、薬剤の細胞内局在を検討した。マーカーとしてはMitoTracker Green、ER-Tracker Green、 LysoTracker Green、NBD C6-ceramide (Invitrogen)を使用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は次項の2点を予定実験内容と設定した。①新規光感受性物質(PS)の腫瘍細胞内への取り込み能の評価および取り込まれた細胞内での局在の評価、②新規PSを用いたPDTの殺細胞効果を既存のPSであるタラポルフィンPDTとの比較検討。 上記2項目は平成30年度で達成可能であったため「概ね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実験計画に則り、下記の実験を予定する。 Xenograft皮下移植腫瘍モデルを作成し、光感受性物質を尾静脈より投与しPDT効果を検討する。実験に用いるレーザー照射には赤色半導体レーザー照射装置(PDレーザー KOYO-PDL664、ディカルSG社製)(完備)を使用する。PDTによる腫瘍血管shut down効果を解析する。上記PDT施行前より血流測定器(OMEGAZONE, OMEGAWAVE社製) (完備)を使用し、腫瘍血管内の血流の評価を経時的に行い、腫瘍血管shut down効果が既知のTalaporfinと比較検討する。in vivoモデルを使用して各薬剤によるPDD応用の可能性を解明する。現行の糖鎖連結光感受性物質の骨格であるクロリンの励起に最適とされる405-420nmの青色光線照射により、630-680nmの赤色蛍光が腫瘍細胞から惹起される(高感度蛍光腫瘍イメージング)。至適励起波長を選定し、薬剤投与量、投与から撮影までの時間、フィルターの選定などPDDに最適なパラメータを検討する。最適条件が解明されれば保険適応薬である5-ALAとの比較検討を行う。さらに新規光感受性物質の高い殺細胞効果を検証するため活性酸素種(ROS)の測定を、Singlet Oxygen Sensor Greenを用いて660nmのLED照射後にプレートリーダーで測定する。
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Causes of Carryover |
殺細胞効果検証および細胞内への取り込み実験において、複数回の実験で再現性を確保する予定としていたが、想定よりも少ない回数で結果が確認されたため使用する試薬が想定よりも少量となったため。 購入費用、細胞培養、実験試薬や実験器具(プラスティック器具など)マウスの購入、および飼育などを中心とした 消耗品費を予定した。研究成果は国内外の学会で発表予定であり、海外発表を視野に入れて経費を予定する。また英文誌に投稿予定のため、英文校閲料および論文投稿料も使用計画に組み入れた。
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