2018 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患における異なる組織幹細胞機能の制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K15759
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
片野 敬仁 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (50768372)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 幹細胞 / KLF |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管幹細胞(Intestinal Stem Cell; ISC)は、①Lgr5を発現し、組織恒常性維持の間に多分化能性幹細胞としての機能を活発的・動的に発揮する幹細胞(active ISC)の集団と、②Bmi1などマーカーを発現し、傷害によるactive ISCの枯渇後の再生源として役立つ、休止または予備のISC(quiescent ISCまたはreserve ISC)に分類される。本研究では、粘膜傷害時におけるISCの挙動や病態形成への関与を探索することを目的し、腸管上皮におけるactive ISCとquiescent ISCの異なる幹細胞の相互関係をBmi1-CreER;Rosa26eYFPマウスなどを用いて、バックアップとして作用するquiescent ISCとしてのBmi1陽性幹細胞の機能制御メカニズムを解明することを目的としている。転写因子であるKLF4が粘膜傷害後の腸上皮の増殖・再生反応に重要な役割を果たしていると考え、研究をすすめている。 Bmi1+細胞はcryptのposition 4付近に存在し、Lgr5+幹細胞に比べslow cyclingであるものの、正常状態においても一定の役割を果たしていることをしめした。蛍光免疫染色を用いてBmi1+細胞とKLF4および増殖マーカーEdUとの関連を検討し、KLF4が正常時においてはBmi1+細胞を静的状態に維持し、粘膜傷害時にはBmi1+細胞を増殖へ誘導するという相反する機能をもつことが示唆された。Bmi1+細胞特異的にKLF4をノックアウト可能なマウスモデルを用いて、粘膜傷害時のBmi1+細胞の挙動とKLFファミリー、とくにKLF4の機能に主眼をおいて研究を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、とくに転写因子であるKLF4の機能に着目して、Bmi1陽性幹細胞の組織恒常性維持および粘膜傷害時における制御機構を解明をすることである。本年度はBmi1-CreER;Rosa26eYFPマウスを用いて細胞系譜を行い、正常状態におけるBmi1陽性細胞の局在を確認した。 本年度は主に正常状態におけるBmi1陽性細胞の局在と腸管上皮におけるKLF4発現の分布や、KLF4とBmi1陽性細胞、増殖マーカーとの関連を中心に解析をすすめた。これらは今後の研究の基盤となる知見であり、粘膜傷害時のBmi1陽性細胞とKLF4の機能解析を行うにあたりコントロールとなるデータである。実験に用いるマウスの準備や、研究を遂行するにあたり必要となる培養技術も習得しており、本研究課題の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はBmi陽性幹細胞特異的にKLF4をノックアウトすることによるBmi1陽性幹細胞への影響を確認する。またBmi1-YFP細胞やKLF4をノックアウトしたBmi1-YFP細胞をセルソーティングし、単一のBmi1陽性細胞からオーガノイドを培養し、ex vivoでも正常状態および粘膜傷害時のBmi1陽性幹細胞におけるKLF4の機能解析をすすめる予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は正常状態の腸管上皮におけるKLF4やBmi1-YFP陽性細胞や増殖マーカーEdUとの関連の解析を中止に検討を行いましたが、蛍光免疫染色や各種実験に用いる試薬などは既存の試薬を用いることが可能であったため、当初の予定より本年度の使用額が抑えられました。次年度は単一のBmi1-YFP陽性細胞をセルソーティングし、オーガノイド培養を行いex vivoでの機能解析を行う予定であり、培養試薬・各種実験試薬のために次年度使用額が生じることとなりました。
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