2018 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫細胞による肝修復とBLT1 シグナルの新たな役割
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18K15760
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
古城 憲 北里大学, 医学部, 助教 (20525414)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肝 / 修復 / ロイコトリエン |
Outline of Annual Research Achievements |
急性肝障害後の「組織修復」の制御機構は十分には理解されていない。生理活性脂質であるロイコトリエン(LT)B4は高親和性受容体BLT1を介して炎症を誘導する。最近発見された生理活性脂質、レゾルビンE1(Resolvin E1; RvE1)はBLT1のリガンドであり、炎症収束作用があることが報告された。BLT1のリガンドにLTB4とRvE1があることは組織修復の過程には炎症誘導から炎症収束という一連の炎症反応カスケードがおきることが重要であるものと考えられる。そこで、BLT1シグナルによる急性肝炎後の炎症収束、組織修復をアセトアミノフェン肝障害モデルを作成して検討した。野生型マウス(WT)ではアセトアミノフェン投与後12時間で肝障害(ALT)はピークとなり、以後漸減し、96時間で正常レベルに回復した。一方、BLT1ノックアウトマウス(BLT1-/-)では24時間以後、ALTはWTより高値を示した。またWTと比較して肝壊死面積が高値であり、肝修復がBLT1-/-で遅延した。好中球集積を経時的に調べると、WTよりBLT1-/-で肝集積好中球が減少した。フローサイトメトリー解析にてもBLT1-/-はWTに比較して肝障害部への集積好中球が減少した。好中球集積は肝修復に重要であることを調べるために抗好中球抗体を前投与してアセトアミノフェンを投与すると、肝障害の遷延と肝修復の遅延がみられた。以上から肝修復早期に集積する好中球は組織修復過程の起点となりうるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度においては、アセトアミノフェン肝障害モデルを用いて生理活性脂質であるロイコトリエン(LT)B4の高親和性受容体BLT1が肝修復に関与するかどうかをまず明らかにすることができた。そのうえで、これまで好中球のアセトアミノフェン肝障害における役割は議論のあるところであるが、本モデルにおいては好中球が肝修復に重要な役割をはたす可能性を示すことができた。したがって本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画に沿って、本研究を進める。来年度では、好中球の肝修復における役割をさらにフローサイトメトリーなどにより解析を加える。さらにマクロファージの関与は知られているところであるが、本モデルにおける関連性を明らかにする。このために肝集積マクロファージの量的、質的な経時的変化を解析する。またマクロファージにおけるBLT1受容体シグナルが肝修復に関与していることを調べる。ついで、アセトアミノフェン肝障害後の肝修復では好中球とマクロファージが個別に関与するのではなく、両者が相互作用することで修復が遂行されることを検証する。
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Causes of Carryover |
納入が間に合わず、次年度に繰り越すこととした。 今年度使用しなかった研究費については、一般試薬の購入に使用する。
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