2018 Fiscal Year Research-status Report
HBVのヒトmtDNAへの組み込み解析と創薬への応用
Project/Area Number |
18K15764
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
及川 律子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (60449395)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | COXIII / HBV組込み / 肝がん |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸アナログ製剤を始めとしたB型肝炎治療の進化だけでは肝発がん阻止が実現できないことから、現在ではHBVウイルスゲノムのヒトゲノム内組込み解析および発がんメカニズム研究が求められている。近年、次世代シーケンサー(NGS: Next Generation Sequencing)の登場によりヒトゲノム網羅的肝発がん解析が進むものの、通常のNGS解析で得られた結果は非組込み部位のゲノム配列がほとんどで、効率的な組込み部位解析が事実上困難であり十分な網羅的解析は実現できていない。 我々は独創的な発想から生まれた組込み部位特異的次世代シークエンス解析法の開発(G-NAVI法)に成功し、GenomeResearch 2015 ほかへ報告してきた。この手法でHBV感染肝がん細胞株では組込み部位の多くが非翻訳領域であったが、興味深いことにミトコンドリアDNA内COX3遺伝子の翻訳領域(exon)へHBV全長が組み込まれていることを発見した。HBVゲノム組込みによりミトコンドリアの呼吸活性低下がHBVゲノム組込みCOX3複合タンパクの分泌を起こし、その近隣の前がん細胞や正常細胞が互いに影響を及ぼすことで悪性化し、がん化が促進されると考えられた。本研究では、COX3-HBV複合タンパクの発がんへの関与や発がんに関連のあるHBx遺伝子の関与を検討することで肝発がんメカニズムの一端を解明し、既存薬剤であるCOX3選択的阻害剤(アセトアミノフェン)の新たな肝発がん抑制効果として創薬への応用につなげる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーにてミトコンドリア領域内COXIII近傍にヒトB型肝炎ウイルス(以下HBV)の組込みが同定された肝がん細胞株HepG2.2.15について、ダイレクトシークエンス法でも同様にCOXIII近傍にHBVが組み込まれていることを証明した。次に肝がん細胞株からミトコンドリアを抽出し、COXIIIおよびシトクロムcをウェスタンブロット(WB)にて同定した。HBV陰性肝がん細胞株であるHepG2と比較してHepG2.2.15ではCOXIIIで顕著な上昇が見られ、シトクロムcは低下していた。更にWBで炎症・癌の増殖に関与するシクロオキシゲナーゼ(COX2)についてHepG2と比較すると上昇していることが明らかになったことから、活性酵素種が関連する発癌機序の可能性が考えられた。今後は、DNA損傷の酸化ストレスマーカーである8-OHdGをELISA法により定量測定することで活性酵素種の関連を明らかにする。またCOX2の上昇からアセトアミノフェンにおける炎症反応の抑制効果が推測されるため、検証する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の実験結果よりHBVの組込みによるCOXIIIの複合蛋白がシトクロムcの機能低下を及ぼし、活性酵素種の増加に伴う発癌機序が考えられた。今後はHepG2.2.15を用いて、直接的な作用機序を解明するとともに、創薬研究としてアセトアミノフェンにおける炎症反応の抑制効果についても検討を行う。
|
Causes of Carryover |
予定の一部を来年度に繰り越したため。 昨年度に予定していた創薬研究を今年度に行う。特にアセトアミノフェンにおける炎症反応の抑制効果の検証を行う予定である。
|