2019 Fiscal Year Research-status Report
HBVのヒトmtDNAへの組み込み解析と創薬への応用
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18K15764
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
及川 律子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (60449395)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HBV組み込み / MT-CO3 / SOD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)感染肝がん細胞株であるHepG2.2.15がミトコンドリア内COXIII(MT-CO3)に組み込みがあることを発見し、その組み込みによるMT-CO3の発現異常による発癌メカニズムの解明を目的としている。 ミトコンドリアDNA内のMT-CO3遺伝子は、核DNA内にも46個の偽遺伝子(Pseudogene)が存在する。Pseudogeneの配列はMT-CO3とほぼ同じ配列の為、HBV非感染肝がん細胞株とHBV感染肝がん細胞株のCOXIII発現解析ではPseudogeneの遺伝子の増幅が起こり、差が認められなかった。現在、MT-CO3遺伝子特異的プライマーを設計し、再解析を行う予定である。 またHBV組み込みによるCOXIII遺伝子の異常はシトクロムcの酸化還元反応を抑制し、活性酵素(ROS)の処理異常を発生させ、癌化へと進展すると考えられた。 そこでHBV非感染肝がん細胞株とHBV感染肝がん細胞株によるMT-CO3およびシトクロムcのウェスタンブロットを行うと、MT-CO3はHBC感染肝がん細胞株で増加傾向にあり、シトクロムcでは抑制を認めた。以上からシトクロムcの異常によるROSの過剰発現が示唆されたため、活性酵素によって生じる生体内産物である8-OHdGの測定を試みたが、差は認められなかった。よって現在は、細胞内に発生したスーパーオキシドアニオンを酸素と過酸化水素に分解する第一段階の酸化還元酵素群であるMn-SOD(SOD2)の測定を行い、増幅の有無を確認することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、HBV組み込みによるMT-CO3の発現異常は、ROSの調整を担うシトクロムcの抑制をもたらしていた。シトクロムcの抑制がROSを増加させ、発がんへ進展すると考えられることから、酸化ストレスマーカーを測定する必要がある。活性酵素の代謝産物である8-OHdGでは差が認められなかった。しかし酸化ストレスマーカーにはDNA酸化マーカーの他に、抗酸化・炎症関連酵素が考えられることから、SODの測定を進めており、予期しないことにも柔軟に対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
MT-CO3の発現解析では、Pseudogeneの配列とMT-CO3の配列が酷似することからも、MT-CO3特異的プライマーを作成することで解決すると考えられる。 また機能解析として複数種の酸化ストレスマーカーを解析し、発癌メカニズムの解明を遂行する予定である。 更にHBV組み込み部位のヒト側とウイルス側のメチル化解析を行う事で、組み込みのメカニズムを更に解明できると考えられる。
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Causes of Carryover |
当初計画していた発癌メカニズムが違うため、新たな機能解析を行う必要性がある。
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