2019 Fiscal Year Research-status Report
食道アカラシアにおける食道細菌叢同定とCAGE法を用いた食道発癌リスク解析
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18K15776
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 一也 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (90793068)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食道アカラシア / 経口内視鏡的筋層切開術 / 食道細菌叢 / 食道癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年4月までに、食道アカラシア患者6名における経口内視鏡的筋層切開術(POEM)前後での口腔・食道、また食道扁平上皮癌患者14名の口腔・食道の検体を採取し、細菌叢を比較した。また、POEM前後での食道内視鏡像ならびに食道上皮の生検検体を比較し、内視鏡的・組織学的な炎症の変化を評価した。 POEMに関わらず、食道アカラシア患者では口腔と食道では細菌構成が有意に異なっていた。POEM前後で口腔・食道細菌叢の全体の構成に有意な変化はみられなかったものの、個々の種に注目すると、POEM後に食道におけるHaemophilusやNeisseriaの割合が有意に増加していた。これらの菌種は胃酸逆流に関連して割合が増加すると報告されている。逆流性食道炎はPOEMの主な術後合併症であり、本研究においても術後半数の患者で逆流性食道炎の所見を認めた。今回の細菌叢の変化は胃酸逆流によるものである可能性がある。 食道癌患者と食道アカラシア患者の食道細菌叢の比較からは、疾患特異的な細菌叢の変化や、食道扁平上皮癌の発癌リスクとなるような細菌の特定はできなかった。 一方で、食道アカラシア患者の内視鏡所見や組織学的な炎症所見はPOEM後に改善がみられた。POEMにより、食餌の通過障害が改善されたことが要因と考えられる。食道アカラシア患者におけるPOEM前後での食道細菌叢の変化は軽微であり、発癌への寄与は明らかにできなかったが、内視鏡・組織学的な所見の改善から、POEMが食道アカラシア患者における食道癌のリスクを低下させる可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検体集積は予定通り進行し、データ解析も終了している。 現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
食道アカラシア患者における口腔・食道の細菌叢の差異を明らかにすることも重要と考え、口腔内細菌叢の解析を追加した。そのため、予算の問題から当初予定していたCAGE法による解析は断念し、口腔・食道細菌叢、内視鏡・組織学的な所見から食道アカラシア患者における食道扁平上皮癌発生リスクを評価することとした。
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Causes of Carryover |
解析検体数が当初の予定よりも若干少なく、またCAGE解析を行わない方針となったため、次年度使用額が生じた。現在論文投稿中のため、必要時英文校正や論文投稿費用として使用予定。
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