2018 Fiscal Year Research-status Report
肝硬変患者における膵うっ血からみた肝性糖尿病の機序解明
Project/Area Number |
18K15787
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
黒田 太良 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (10771876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵うっ血 / 肝性糖尿病 / 膵線維化 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝性糖尿病の発症機序として,膵うっ血に伴う低酸素状態がインスリン分泌低下を引き起こしている可能性を考えた. はじめに,四塩化炭素投与によって作製した肝硬変モデルラットの膵組織を用いた検討を行った.形態学的には肝硬変ラットではコントロールに比してα-SMA染色で膵内に線維組織が著明に増加していた.また,二光子顕微鏡においても線維化がみられることが確認され,現在定量的な評価を追加で行っている.次に,膵組織の低酸素状態をHIF-1α発現およびインスリン発現をみることで確認した.膵ラ氏島における発現は,肝硬変ラットでコントロールに比してHIF-1αが高発現しておりインスリン発現が低下していた.現在,膵組織の低酸素状態評価としてピモニダゾールを用いた評価を追加で行っている. さらに,臨床的にも同様の事象が起こっているかどうかを確認するため,ヒト肝硬変患者におけるペルフルブタンを用いた造影超音波による膵血流評価,Shear wave elastography(以下SWE)による膵および脾硬度評価,グルカゴン負荷試験によるインスリン分泌能評価を行った.肝硬変患者ではコントロール患者に比して,有意に膵への血液流入時間・排出時間が遅延,SWEでは膵硬度・脾硬度が高値となっており,グルカゴン負荷試験におけるΔCPR値が有意に低下していた.膵硬度と脾硬度には有意な正の相関関係が,膵硬度とΔCPR値には有意な負の相関関係がみられ,ヒト肝硬変患者においても肝硬変モデルラットで確認された事象に矛盾しない結果が得られた.現在,ヒト肝硬変患者の膵において線維化や低酸素状態がみられるかどうかについて病理解剖組織を用いた追加検討を行っている. 以上のことから,膵うっ血に伴う膵の線維化および低酸素状態がインスリン分泌低下の原因となっていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より肝性糖尿病の発症機序として膵うっ血および低酸素状態を想定しており,現時点までにおいては肝硬変モデルラットおよび臨床的な検討ともに想定を逸脱しない結果,症例登録が得られている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初より肝性糖尿病の発症機序として膵うっ血および低酸素状態を想定しており,現時点までにおいては肝硬変モデルラットおよび臨床的な検討ともに想定を逸脱しない結果,症例登録が得られている. 新たな知見として膵線維化の機序が想定されたため,研究計画で予定していた内容に加え,線維化に関連する追加検討も行っており,今後遅延なく検討をすすめていくための研究計画修正を行っていく.また,現在得られている知見においても科学的な裏付けをすすめるため,複数個体における検討や,他の手法を用いた多角的なアプローチを行っていく. 臨床的な検討においてもまだ登録患者数が十分とはいえないため,引き続き症例登録をすすめていき,追加解析を行っていく.
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Causes of Carryover |
現時点まででは概ね予定通り研究を遂行することができたが,膵の線維化に関する新たな知見が得られ,低酸素に関連する追加検討が望ましいことが想定されたため,次年度以降に追加検討をするための費用を残す方針とした.次年度を中心に繰り越し費用を用いた前述のような追加検討を行いたいと考えている.
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