2018 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌幹細胞はエクソソームを介した「自律性ニッチ」を形成しているのか?
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18K15803
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒羽 正剛 東北大学, 大学病院, 助教 (70709469)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロRNA(miRNA)は細胞内で遺伝子発現を調整し大腸癌の発癌機構や微小環境の維持に重要な役割を担っていることが報告されている。近年、miRNAはエクソソームという脂質二重膜を有する細胞外小胞に保護された状態で細胞外へ分泌され、細胞間の情報伝達に寄与することが明らかとなってきた。我々は大腸癌が進行する過程で細胞内miRNAのみならず細胞外に分泌するエクソソームmiRNAにも変化をきたし、周囲の微小環境に何らかの影響を与えると仮定した。この仮説を、近年確立された三次元オルガノイド培養システムを用いて様々な進行度の大腸腫瘍をin vitroで長期培養することで検証した。本研究の目的は、大腸腫瘍の浸潤に伴い変動するエクソソームmiRNAを明らかにし、微小環境への関与を明らかにすることである。すなわち、本研究の仮説は以下の3つである。①大腸癌は進行(=遺伝子変異やエピジェネティックな変異の蓄積)により分泌するエクソソームに質的変化を来す。②エクソソームには癌幹細胞を維持するニッチ形成因子が含まれる、もしくは周囲の細胞へニッチ形成因子の分泌を誘導する何らかの因子が含まれる。③それにより、周囲から制御されていたニッチに依存しない癌幹細胞の自律した増殖、維持が可能となり転移先での生着を来す。これらは大腸癌細胞同士のニッチ形成のみならず、周囲線維牙細胞などとの情報伝達も含む。上記メカニズムを我々は新たに「エクソソームによる自律性ニッチ」と名付け、その機能の解析を目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定通り、手術及び内視鏡で切除された大腸腺腫、大腸癌から単離した細胞のオルガノイド培養に成功した。さらには得られた培養細胞株の上清を回収し、超遠心法を用いてエクソソームを抽出した。抽出したエクソソームの形態を電子顕微鏡、NanoSightで解析し、Total Exosome RNA and Protein Kit(invitorgen)を用いてtotalRNAを精製した。マイクロアレイにて網羅的に遺伝子発現プロファイルを比較した。2群間(腺腫-癌、早期-進行癌等)で発現が異なるmicro RNAを絞り込むことが可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
予定通りマイクロアレイで得られたmiRNAの機能解析を行う。オルガノイドのウイルスベクターを用いて得られたmiRNAの強制発現、抑制系を樹立して、機能解析を行う予定である。また、患者血清を用いたリキッドバイオプシーの候補miRNAの抽出も行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は研究が順調にすすみ想定していた培養維持費用よりも少ない額での運用が可能であった。次年度は遺伝子導入、プラスミド作成などを予定しており、一部を次年度使用とした。
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