2018 Fiscal Year Research-status Report
組織炎症による膵発がん促進メカニズムとヒストンメチル化制御の意義
Project/Area Number |
18K15804
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斎藤 友隆 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10815781)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵がん |
Outline of Annual Research Achievements |
疫学上、炎症はヒト膵発癌のリスク因子である。膵前癌病変自然発生マウスモデルから得られた知見を基に、組織炎症ストレス下での前癌細胞におけるエピジェネテイクス制御の重要性とその背景の分子機序を明らかにする。 Kras遺伝子変異が誘導するマウス膵前癌病変においてはacinar- ductal metaplasia (ADM)という特徴的な細胞特性の分化転換がみられ、それが前癌細胞PanINとして悪性化進行の基となる。ADMはKras遺伝子変異などに伴って膵腺房細胞の脱顆粒と立方上皮を伴って上皮様に細胞形態が転換する現象であり、遺伝子発現上でも腺房細胞マーカーから膵管上皮パターンにシフトする。この現象はヒト膵腫瘍組織でも確認され、発癌への寄与が議論されている。Kras遺伝子変異によるADMの進行は炎症の合併により著しく促進されるとともにADMは生存競合により非ADM細胞を駆逐する。一方ヒストン修飾制御が破綻するとADMの誘導は同様にみられるものの、炎症の消退と共にその細胞群は逆に非ADM細胞に凌駕される。つまりこの生存プロセスにおいては、エピジェネテイクス機構で発現制御される遺伝子群の重要性が示唆される。 よって本研究では膵前がん病変自然発生モデルであるP48Cre:KrasG12D マウスを用いて研究を行う。その制御標的遺伝子群とその働きを解析し、炎症下での膵前癌病変進展における生存メカニズムをヒストン修飾経路の視点から検討する。この研究により炎症下での発癌進展におけるエピジェネテイクス制御の意義を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P48Cre:KrasG12D マウスにセルレインを投与し膵に一過性に炎症を誘導すると、Kras遺伝子変異によるADMの進行は著しく促進され、その結果二週間程度でADMの細胞群が非ADM細胞を駆逐し、膵全体がPanIN組織に置き換わり悪性化進行が継続する。これは既報でも示される通り、膵発癌と炎症の関連を支持する現象の一つである。一方ヒストンメチル化酵素遺伝子が欠損するとADMの誘導は同様にみられるものの、炎症の消退と共にADMの細胞群が逆に非ADM細胞に凌駕され、一か月後にはPanINがわずかに残存するのみとなることを見出した。これは前癌状態の細胞間の生存プロセスではヒストン修飾が重要な働きを有する可能性を示唆する。
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Strategy for Future Research Activity |
両者の組織から抽出したRNAを用いて網羅的な遺伝子発現を比較する。また、両者の組織においてアポトーシスの差異の有無を免疫染色にて検討する。細胞増殖についてもKi67、細胞内シグナルリン酸化について免疫染色にて比較する。
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