2018 Fiscal Year Research-status Report
炎症性腸疾患の新規バイオマーカーの探索と個別化医療への応用
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18K15812
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村上 真理 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (10801293)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / ヒト腸管粘膜固有層 / 腸管免疫 / 獲得免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫疾患では病変局所において疾患特異的な免疫担当細胞が局在していると考えられ、その解析を行うことによって病態や治療標的の解明につながる可能性がある。これまでにヒト腸管の粘膜固有層に局在する自然免疫担当細胞を安定的に単離する方法を確立し、その疾患特異的な免疫応答と病態への関連を明らかにしてきた。これらの知見と手法をさらに発展させることにより、本年度の研究では治療抵抗性炎症性腸疾患の病態形成に寄与する獲得免疫担当細胞を探索することを目標とした。内科的治療に不応のため外科的治療が施された炎症性腸疾患患者の切除腸管病変部および大腸癌患者の非癌部の腸管粘膜固有層より獲得免疫担当細胞を単離し、マスサイトメーターにて22種類の細胞表面マーカーを金属標識抗体としたパネルを用い、半網羅的解析を行った。個々の症例の腸管免疫系を構成する免疫担当細胞は、細胞表面マーカーの発現パターンによって複数の細胞サブセットに分類され、炎症性腸疾患群において大腸癌非癌部に比し有意に増加あるいは減少している免疫細胞サブセットを検出することができた。さらに、腸管粘膜固有層に局在する獲得免疫担当細胞に種々の刺激を加え、細胞内シグナル分子の発現が細胞表面マーカーの発現パターンの中でどのように分布するかについても検証した。以上の解析結果にもとづき、現在、炎症性腸疾患の病態に関連する腸管局所のマーカーを絞り込みつつある段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト腸管粘膜固有層より獲得免疫担当細胞を単離する方法およびマスサイトメーターによる解析の安定した手法の確立に予定以上の時間を要したため、解析数が当初予定より少ないものの概ね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果に基づき、炎症性腸疾患と大腸癌非癌部で発現に有意差のあった獲得免疫担当細胞サブセットをソーティングし、それぞれの細胞サブセットにおける網羅的遺伝子発現解析を施行する。さらにこれらの細胞サブセットにおけるサイトカインの分泌や制御性因子の発現についても検証する。これにより特定の免疫担当細胞の機能や病態との関連性を明らかにすることができ、治療標的となる分子が同定される可能性がある。さらに炎症性腸疾患の患者群間で免疫担当細胞の構成を比較し、特定のマーカーにより炎症性腸疾患患者の層別化ができるかどうかについても検討を行うことで個別化医療への布石となる知見を得ることを目標とする。
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Causes of Carryover |
実験至適条件の検討に予定よりも時間を要したため、本年度に行うことのできた解析の対象数が当初の予定数よりも少なく、未使用額が生じた。検体は順調に入手できている状況であり、今後も引き続き検体を解析するため未使用額はその経費に充てることとし、当初の計画を遂行する予定である。
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