2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト培養肝細胞を用いた非アルコール性脂肪肝炎のin vitroモデルの作成
Project/Area Number |
18K15814
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
村上 英介 広島大学, 病院(医), 助教 (30813175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH) は、肝細胞脂肪化と炎症細胞浸潤、肝線維化を特徴とする慢性肝疾患であり、発症と病態の進展に関連する正確な機序はいまだ不明であるが、多因子が複雑に相互作用することが推定されている。本研究では、肝細胞、肝星細胞、単球の3系統の細胞を用いて、ヒト肝内微小環境に類似した実験系を作成し、NASHに関連因子と遊離飽和脂肪酸を添加することで、ヒトNASHのin vitroモデル作成を試みることを目的とする。 肝細胞として初代培養ヒト肝細胞(Primary hepatocyte; PH)、肝星細胞として培養不死化肝星細胞株(LX-2)、単球として培養単球株(THP-1)を用い、共培養するモデルを用いて、NASHにおける肝細胞と周辺細胞間における細胞間相互作用の検証を行う方針であり、修飾刺激因子として腸内細菌由来の菌体成分(LPS)、飽和脂肪酸であるパルミチン酸(PA)を用いた。 始めに培養肝細胞とLX-2の共培養モデルを作成し、LPS(1mM)とPA(100ng/ml)の添加にて、LX-2内の細胞外マトリクス関連遺伝子の遺伝子発現亢進(2-5fold)を確認した。発現の変化は修飾刺激因子添加後24時間で解析したまた、炎症性サイトカインを含む培養液の併用によって、発現が上昇することを確認した。また、肝細胞内の脂質合成遺伝子群も、同様の条件で発現が亢進することを、複数の条件下で確認した。LPSとPAにはこれらの変化に対する相加効果があることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在は培養細胞を用いた遺伝子発現変化を確認中であるが、修飾刺激因子であるLPS、PAおよび炎症性サイトカインの量による変動幅が大きく、一定した発現変化が得られていない。そのため、条件を複数の段階に設定し、最適条件を検討中である、これらの予備実験のため、当初の計画よりやや遅れていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
培養肝細胞モデルで細胞間相互作用の検証を行った後に、同様の条件下でPHB細胞での相互作用を検証する方針である。具体的には、共培養モデルで修飾刺激(LPSもしくはPA)を添加した後に、回収した各細胞よりTotal RNAを回収しcDNAライブラ リを作成する。培養肝細胞内の脂肪蓄積は、染色等を用いて形態学的に評価する。LX-2の活性化は、LX-2中の細胞外マトリクス関連遺伝子の遺伝子発現変化を、GAPDHで補正したrealtime PCR結果を用いて判定する。 回収したcDNAを用いて、次世代シークエンサーを使用してRNA-sequenceのデータ収集を行うと同時に、回収された培養上清を用いて、Transcriptome解析とMetabolome解析、exosome解析を行い、共培養モデルで有意に変化した蛋白、microRNA、exosomeの結果と比較検討する。これらの検討から、細胞内相互作用の鍵となる生体内小分子を検索した後に、これらの候補物質の存在、非存在下で、培養肝細胞内の脂肪蓄 積、ないしはLX-2の活性化を再評価し、再現性の高い結果が得られた候補物質のうち、培養肝細胞脂肪化とLX-2活性化とに最も有意に関連している因子を明らかにする。
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