2018 Fiscal Year Research-status Report
肝がんの再発・転移におけるMYCN陽性肝がん細胞由来エクソソームの役割の解明
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18K15833
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
Qin XianYang 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60756815)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | MYCN / 肝がん / 予後予測 / バイオマーカー / liquid biopsy |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における肝がんの年間罹患数は約40,000人に上り、ステージIであっても5年生存率は70~80%と極めて予後不良である。個々の肝がん患者において、肝発がんのリスクおよび治療効果を予測してから最適な予防・治療計画を行う治療法(いわゆる「個別化医療」)の開発は、肝がんをはじめとする難治性がんの克服につながる有意義なものだと考えている。以上のような背景により、肝がん予防・治療において適応患者の予測バイオマーカーの開発が強く求められている。本研究は、申請者の先行研究に基づき肝がんの再発予防治療の標的MYCNを治療標的とし、特にliquid biopsyやエクソソームに着目し、肝がん再発・転移において予測マーカーとしての有用性及び制御因子としての役割の検討を目的とする。本年度では、肝がん組織及びliquid biopsy中のMYCN量は肝がんマーカーとして有用であることを明らかにした。具体的に以下のような成果を上げた。1)日本およびヨーロッパの肝がん患者のがん組織検体を用いた解析では、MYCNの発現は、非がん部より肝がん組織において有意に高いことが分かった。肝がん患者の追跡調査から、MYCNの発現が高いと、術後の肝がん再発率も高くなる正の相関がみられた。2)MYCN遺伝子のイントロンを挟むプライマーを用いたPCRで血清由来エクソソーム中のMYCN遺伝子発現が検出可能であることを確認できた。3)血清及び血漿中MYCNタンパク質の定量に成功した。健常人に比べ、肝がん患者の血清MYCN量は有意に高いことが分かった。さらに、外科切除後の血中MYCNタンパク質は術前に比べ有意に減少し、血中MYCNは肝がんの新規診断マーカーとして使えることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝がん組織中のMYCN遺伝子発現と早期段階の肝がん患者の予後・再発との関連について、国内外の複数施設において確認できた。肝がん患者の血清検体を用いエクソソームを抽出し、MYCN遺伝子のイントロンを挟むプライマーを用いたPCRでMYCN遺伝子発現を調べた。電気泳動によりエクソソーム中のMYCN遺伝子発現が検出可能であることを確認できたが、その遺伝子発現の定量は困難だったので、血液中のMYCNタンパク質の定量解析に変更した。その結果、肝がん患者由来の血清及び血漿中のMYCNタンパク質の定量に成功した。健常人に比べ、肝がん患者の血清MYCN量は有意に高く、外科切除後の血清中MYCNタンパク質は術前に比べ有意に減少し、血中MYCNタンパク質量は肝がんマーカーとして有用であることを明らかにした。血中MYCNタンパク質の変化と肝がんの再発・転移との関連の検討は次年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)血中MYCNの変化と肝がんの外科切除及び分子標的薬の治療効果との相関を検証する後向き介入試験を実施し、肝がん予後予測バイオマーカーとしての有用性を検討する。2)MYCN高発現と低発現の肝(がん)細胞を用いた統合オミクス解析により、MYCN持続活性化の分子制御機構並びにエクソソームを介した肝がん微小環境の制御機構を解明する。
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Causes of Carryover |
理由:当初予定していた肝がん患者の血清由来エクソソーム中のMYCN遺伝子発現の定量から血液中のMYCNタンパク質発現の定量へ変更したので、liquid biopsy中MYCNの検出系の構築は遅れていたので、次年度使用額が生じた。 使用計画:MYCNタンパク質の検出キットを入手し、血中MYCNタンパク質量と肝がんの外科切除及び分子標的薬の治療効果との相関を検証する。また、RNA-seqなどの統合オミクス解析の受託解析並びに理研所内の共通設備を利用し、MYCN持続活性化の分子制御機構を解明する。
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Research Products
(11 results)