2018 Fiscal Year Research-status Report
大動脈弁狭窄症発症におけるCircular RNA ITCHの機能解明
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18K15838
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大瀧 陽一郎 山形大学, 医学部, 医員 (80732693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ITCHとDVLの相互作用 / 左室肥大 / 大動脈弁狭窄症 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生仔ラット心筋細胞において、ユビキチン転移酵素ITCHを過剰発現すると、標的たんぱく質であるDvlのタンパク質発現が低下することを発見した。Angiotension刺激やエンドセリン1刺激では、予想に反して、Dvlの発現量に変化を認めなかった。他方、Wnt3aで刺激するとDvlが増加し、βカテニン経路が活性化し、心筋細胞は肥大した。ユビキチン転移酵素ITCHをsiRNAでノックダウンすると、Dvlが増加しβカテニン経路が活性化し、最終的に心筋細胞肥大を認めた。他方、ユビキチン転移酵素ITCHを過剰発現した際には、Dvlが低下するものの心筋形態に変化はなかったが、Wnt3aで刺激すると心筋細胞肥大を抑制した。ITCHの阻害剤が同定されたので、ITCH阻害剤を心筋細胞に投与したところ、心筋細胞は細胞死を来した。また、Wnt3aとITCH阻害剤を用いた実験系では、心筋細胞は肥大と細胞死が同時に認められ、心筋細胞における細胞形態や細胞死におけるITCHの重要性が示された。同様の実験を豚大動脈弁間質細胞を施行することを計画している。
心臓特異的ITCH過剰発現マウスに対して、大動脈縮窄手術を行い心肥大を誘導した。ITCH過剰マウスでは、心肥大を抑制することを発見した。また、心肥大を誘導した際に、Dvlのisoforomである1-3が経時的に発現量が変化しており、特にITCHはDVL3の分解を誘導することを発見した。DVLは循環器疾患においては過去にDVL1やDVL2の報告がいくつか報告されているが、DVL3に関しては検討されていない。そのため、DVL3の心疾患における役割を同時に検討していく必要性が示唆された。
大動脈弁特異的CircularITCH過剰発現マウスの作成に難渋している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新生仔ラット心筋細胞における実験系は概ね順調に経過している。他方、新たなリサーチクエッションとして、ユビキチン転移酵素ITCHとDVLの相互作用を心筋細胞でも確認し、病的心におけるITCHとDVL3相互作用の重要性を発見した。循環器領域において、DVL1やDVL2がWntシグナルや心肥大に与える影響は報告されているが、DVL3に関しては皆無である。DVL1-3は構造的に類似しているものの、DVL3はC末端のHis single amino acid repeatを特徴的な構造としてもち、non-canonical WNT signalを誘導することが報告されている。ITCHがcanonical Wnt signalを調整するデータは得たが、追加でnon-canonical Wnt signalへの影響を検討する必要性が示唆された。DVL3のプラスミドを購入し、心筋細胞においてco-transfectionし免疫沈降法で評価したところ、非常によく結合しており、心筋細胞においてITCHとDVLの相互作用が強いことが示された。腫瘍細胞においては、Dvl1-3が腫瘍の進展に与える影響はDVL3>DVL1>DVL2とも報告されており、DVLのアイソフォームによる違いを検討する必要性が示唆された。
心筋特異的Circular ITCHを作成しているところであるが、心筋特異的ITCH過剰発現マウスにおいてもCircular ITCHの発現が上昇していることを認めた。そのため、心筋特異的Circular ITCHより大動脈弁特異的Circular ITCH過剰発現マウス作成が重要と判断しそちらの作成にとりかかっているが、大動脈弁特異的CircularITCH過剰発現マウスの作成に難渋している。
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Strategy for Future Research Activity |
新生仔ラット心筋細胞におけるCircular ITCHの機能をin vitroで検討する。 これまで、心筋細胞においてCircular ITCHの機能を検討した報告はない。Wnt3やAngiotensin II刺激に対してCircular ITCHの発現量の変化を検討する。遺伝子導入やsiRNAによりCircular ITCHをoverexpressionまたはknockdownした心筋細胞に刺激を加え、miR214や標的タンパク質の変化、Wnt/β catenin経路の活性化を検討する。また、胎児性遺伝子の発現や、細胞サイズを検討し、Circular ITCHが心筋細胞の肥大を抑制するか検討する。Circular ITCHの機能がmiR214やITCH依存性であるかEZH2阻害剤やITCH siRNAを用いて検討する。同様に、Circular ITCHをノックダウンした際に、Wnt/β catenin経路に与える影響を検討する。
心筋特異的Circular ITCH過剰発現が大動脈弁狭窄症における心肥大を抑制するか検討する。In vitroの検討と並行し、in vivoにおける検討も進める。Circular ITCH心筋特異的過剰発現マウスを作成し、Circular ITCHが大動脈弁硬化や左室肥大に与える影響、更には心機能や生存率に対する影響を詳細に検討する。また、心筋特異的にITCHを過剰発現したトランスジェニックマウスの結果を踏まえ、Circular ITCH過剰発現マウスとITCH過剰発現マウスが、大動脈弁狭窄症モデルにおける左室肥大に与える影響の違いについて検討する。Circular ITCHの機能がmiR214やITCH依存性であるかEZH2阻害剤やITCHノックアウトマウスと交配することで、Circular ITCHの心保護効果がリバースされるか検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 予定されていた予算はほぼ使用したが880円わずかに残金が生じた。 (使用計画) 来年度に消耗品購入に使用する予定である
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