2019 Fiscal Year Research-status Report
大動脈弁狭窄症発症におけるCircular RNA ITCHの機能解明
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18K15838
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大瀧 陽一郎 山形大学, 医学部, 助教 (80732693)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HECT type E3 ligase ITCH / Circular ITCH / 大動脈弁狭窄症 / 心肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈弁狭窄症は、大動脈弁の硬化と左室肥大の形態変化を伴う疾患であり、さまざまな細胞において、種々の細胞内シグナルが複雑に絡み合い発症する。Circular ITCHは、Micro RNA(miRNA)の吸着やHECT型ユビキチン転移酵素ITCHの発現を調節する機能を有する。ITCHは、タンパク質をユビキチン修飾することで分解し、細胞内シグナルを調節し、細胞死や細胞形態を調節する。本研究では、Circular ITCHがmiR214を代表とするmiRNAを調節するとともに、ITCHのタンパク質発現を調節し、Wnt/β catenin経路を介して大動脈弁硬化や左室肥大を来す細胞内シグナルに与える影響を検討する。また、マウス大動脈弁狭窄症モデルを作成し、心保護的に働くか検討を行う。
大動脈弁間質細胞において、osteogenic mediumによる刺激はmiR214を増加したが、circular RNA ITCHを過剰発現しても、予想と反してmiR214は抑制されなかった。他方、osteogenic medium刺激でユビキチン転移酵素ITCHはタンパク質発現が減少したのだが、circular RNA ITCHを過剰発現するとこれが抑制された。Circular ITCHはITCHの発現調節にかかわることが示唆された。Circular ITCHの機能は、ITCHのユビキチン転移酵素活性に依存すると考え、ユビキチン転移酵素ITCHの機能解明を行った。ITCHを大動脈弁間質細胞に過剰発現するとITCHのみならずcircular RNA ITCHも増加した。ITCHを過剰発現した大動脈弁間質細胞や心筋細胞では、Dvl1・Dvl2・Dvl3を分解することでWntシグナルが抑制された。大動脈弁間質細胞においては石灰化が抑制され、心筋細胞においては心肥大が抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Circular ITCHの機能検討に焦点をあてていたが、Circular ITCHのみではmiR214を抑制には至らずCircular ITCHの機能はmicro RNAの吸着よりはITCH自体の発現を安定化することである可能性が示唆された。そこで、ユビキチン転移酵素ITCH自体の機能を大動脈弁間質細胞と心筋細胞で検討を行った。まず、人大動脈弁サンプルにおいて、ユビキチン転移酵素ITCHのmRNA発現を検討した。mRNA levelではITCHが有意に低下していた。そこで、大動脈弁狭窄症においては、ITCHの機能低下が関与していると考え、大動脈弁間質細胞と心筋細胞にITCHを過剰発現した。ITCHの過剰発現に伴いCircular RNA ITCHも有意に発現が上昇した。大動脈弁間質細胞および心筋細胞においてITCHは、Wntシグナルのハブタンパク質であるdishvelled (Dvl)1, 2, 3のいずれとも結合することを見出した。興味深いことにユビキチン化の程度を測定したところ、Dvl1はosteogenic mediumの刺激や心筋肥大刺激に対しては、脱ユビキチン化していたが、Dvl2やDvl3はユビキチン化が促進されていた。その結果、Dvl1が刺激に対して発現量が亢進しており、大動脈弁や心筋細胞の肥大に関連するWntシグナルはDvl1依存性である可能性が示唆された。心筋特異的ITCH過剰発現マウスは、wire injuryにより誘導された大動脈弁狭窄症による心肥大を抑制し、生命予後を改善した。現在大動脈弁に特異的にITCHを過剰発現するマウスを検討中である。他方、ITCHのノックアウトマウスに関しては、免疫不全で70日程度で死亡することが知られており、ITCH阻害剤であるクロミプラミンを用いて、大動脈弁狭窄症発症におけるITCHの機能を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ユビキチン転移酵素ITCHを大動脈弁間質細胞や心筋細胞に過剰発現することで、Wntシグナル抑制を介して、大動脈弁間質細胞石灰化や心筋細胞肥大を抑制することを確認した。また、siRNA-ITCHを用いてITCHを機能的にノックダウンすると、大動脈弁間質細胞の石灰化が促進され、心筋細胞は肥大した。ITCH過剰発現による効果がcircular RNA ITCHに依存するかどうか、EZH2阻害剤を用いて検討する。EZH2阻害剤によりリバースされた場合には、ITCHとCircular RNA ITCHをco-transfectionにより同時に過剰発現することで更に大動脈弁石灰化や心筋肥大が抑制されるか検討する。近年、ITCH阻害剤としてクロミプラミンが同定された。クロミプラミンでITCHの活性を阻害した場合に、Circular RNA ITCHが大動脈弁間質細胞石灰化や心筋細胞の肥大を抑制するか検討する。 ITCHのノックアウトマウスは免疫不全を発症し、70日程度で死亡することが知られている。そこで、クロミプラミンによりITCHの活性を抑制し、Wire injuryにより大動脈弁狭窄症を誘導し、大動脈弁石灰化・弁口面積狭小化・生命予後に与える影響を検討する。Wire injuryによる大動脈弁狭窄症は、2週間程度流速が4 m/sを超える重症な大動脈弁狭窄症が形成される。そのため、クロミプラミンで大動脈弁狭窄症が増悪した場合にエコーによる評価が困難となる可能性がある。その際にはApoE KOマウスにアンギオテンシンを投与してmildな大動脈弁狭窄モデルを用いて検討していく。また、ITCH心筋特異的過剰発現マウスにEZH2阻害剤を投与し、ITCH過剰発現マウスによる心筋肥大の抑制効果がリバースされるか検討していく。
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Causes of Carryover |
残金は、少額なので、次年度の消耗品購入に使用する予定です。
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