2018 Fiscal Year Research-status Report
交感神経過緊張による急性心不全増悪機序の解明と交感神経減負荷を介した治療への応用
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18K15851
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂本 隆史 九州大学, 大学病院, 助教 (50641015)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性心不全 / 交感神経 / 血行動態 / 圧受容器反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 頸動脈洞分離法による交感神経活動制御法の確立 心不全発症時には交感神経は必ず賦活化していることから、両者は非常に強い関連があるものと推測される。一方で交感神経を自在に制御することは困難であるため、その関連についての評価は限定的であった。我々は動脈圧受容器反射に注目し、交感神経制御を行った。動脈圧受容器反射は動脈圧受容器にかかる圧の変化により交感神経活動を瞬時的に制御している。この動脈圧受容器にかかる圧を制御することで交感神経活動を自在に制御する。動脈圧受容器の存在する両側頸動脈洞を体循環から分離することで動脈圧反射を開ループとする。正常犬および心不全犬において頸動脈洞にサーボポンプを接続することで、頸動脈洞内圧を高速かつ自在に設定する技術を確立した。 2) 正常犬および心不全犬での交感神経賦活化に対する血行動態変化の評価 正常犬および心不全犬を用いて、心拍出量、両心房圧、上行大動脈圧を同時に測定し、頸動脈洞分離法にて交感神経活動を変化させた際の血行動態データを過去データも合わせて使用した。安静時の血行動態では、心不全犬の方が心拍出量が少なく、左房圧が高く、心ポンプ機能の低下を確認した。正常犬では交感神経賦活化により心拍出量の増加と血圧の上昇を認めたが、左房圧の上昇はわずかであった。これに対して頻拍ペーシングにより作成した心不全犬では心拍出量は減少し、左房圧は著明な上昇を認めた。交感神経賦活化により、正常犬ではうっ血を生じず心拍出量の上昇が得られるのに対して、心不全犬では著明な血行動態悪化をきたすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り頻拍ペーシングによる心不全犬の作成、正常犬および心不全犬での頸動脈洞分離法の確立、正常犬と心不全犬での交感神経賦活化に対する血行動態応答の違いによる急性心不全発症の機序解明を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には心機能の低下した心不全犬において、交感神経の賦活化が血行動態を秒単位で劇的に悪化させることを示すことができた。平成31年度は①交感神経賦活化による血行動態悪化の機序解明、②急性心不全に対する圧受容器反射刺激を用いた心不全治療のPOC取得を行う。①に関しては、心臓のポンプ機能を規定する心拍数、収縮能、末梢血管抵抗と負荷血液量の交感神経賦活化に対する応答性評価と、圧容量関係から算出する心筋の酸素消費量について検討を行う。②については心不全犬に容量負荷を行うことにより急性心不全を発症させ、圧受容器への電気刺激による血行動態応答を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で使用する動物は高額であり、2年間で計画した研究を完遂するには可能な限り動物使用数を削減・効率的に使用することが必須があった。この観点から平成30年度に計画していた研究内容については過去データの利用、他実験で使用した動物を用いることにより、使用する動物個体数を減らし予定通りに解析を行うことが可能であった。このため主に物品費の使用額が想定した額より少なくなった。一方で計画通りの結果が得られたことから研究は順調に進んでいるものと判断している。 平成31年度の計画でも犬を使用する予定であり、平成30年度から繰り越した予算は動物及び消耗品、学会発表の旅費に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)