2018 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞に対する水素吸入療法の病巣到達経路解明及びヒト投与量シミュレーション解析
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18K15859
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
後藤 信一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50770864)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水素 / シミュレーション / 吸入 / 到達経路 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水素吸入により水素分子がどの様に脳梗塞部位に到達するかを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、2018年度は主に、ラットにおける脳内の水素濃度測定、シミュレーションを行うための設備及びソフトウエアの構築を行った。水素濃度の測定では、ラットの脳内に水素電極を挿入し、経時的に水素濃度を測定することができた。しかし、ニードル型の水素電極を使用していたため、針の先端から根元までのどの部位で水素が測定されているか特定することが困難であった。従って、水素の測定部位を点として正確に把握することができず、気相からの距離と水素濃度の関係をプロットし水素が単純拡散していることを証明するまでにはいたらなかった。次年度にはプローブの形状を工夫し点で水素濃度を測定できるものを使用することで、仮説の確実な検証を目指す。 シミュレーション環境及びソフトウエアの構築では、コンピュータを購入し、高性能のCPU (20 core), 大容量のメインメモリー (384 GB)、計算アクセラレータとしてのGPUの搭載を行った。シミュレーションソフトウエアとしては、OpenFOAMを利用することを予定していたため, 構築したコンピュータにはLinux (Ubuntu 16.04)をインストールし、OpenFOAMのインストールも行った。簡単な流体力学のシミュレーションで本環境をテストし、成功した。データを安全に保存するため、ストレージとしてはRedundant Arrays of Independent Disks (RAID)技術を用いて構成し、8台のハードディスクを用いてRAID 6 (8台中2台の故障までであれば、データは消失しない)構成とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、水素吸入により水素分子がどの様に脳梗塞部位に到達するかを明らかにすることを目的としている。この目的を達成するため、2018年度は主に、ラットにおける脳内の水素濃度測定および、シミュレーションを行うための設備、ソフトウエアの構築を行った。水素濃度の測定では、ラットの脳内に水素電極を挿入し経時的に水素濃度を測定することができた。脳内における水素電極の位置をマッピングする装置及びソフトウエアの開発に着手したが、これらは完成には至らず今後継続する方針である。シミュレーション環境及びソフトウエアの構築では、コンピュータを購入し、高性能のCPU, 大容量メモリー、計算アクセラレータとしてのGPUの搭載を行った。シミュレーションソフトウエアとしては、OpenFOAMを利用することを予定していたため, 構築したコンピュータにはLinux (Cent OS)をインストールし、OpenFOAMのインストールも行った。簡単な流体力学のシミュレーションで本環境をテストし、成功した。 人に対する最適な投与量を予測するにあたり、水素が局所の酵素に効いているのか、血管拡張など遠隔の部位に効いているのかを明らかにすることが必要と考えられたため、追加で局所の酵素に対する水素の効果を確認した。結果として、少なくとも1つの局所の酵素には水素暴露による影響がみられたことから、局所濃度が重要と考え、当初の予定通り研究を進めることとした。追加実験を行なったが、研究の進捗自体は現時点ではほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、水素が単純拡散で脳内に到達しているという仮説を確実に検証するため、水素の測定に用いる水素電極のプローブを工夫し、点で濃度測定ができるものを使用して再度実験を行う予定である。この実験が完了すれば、気相から距離と水素濃度の最大値をプロットすることで、水素の到達が単純拡散であるか、または何かに促進されたものであるかが判明する。 次にこの結果をシミュレーションの結果と突き合わせて、単純拡散で予想される濃度と実際に測定された濃度が、各時点において一致することを確認する。このために、当初の予定通り、ラットの頭蓋骨のCTスキャンデータから、頭蓋骨、脳、気相の3つの部位で、それぞれ異なる物質として定義したモデルを作成し、計算を行う。これらの計算は複雑であるため、1回の計算に膨大な時間を要する。頭蓋骨のモデルがCTスキャンから自動生成したものであるため、形状が不必要に複雑であることが原因の一つと考えられるため、頭蓋骨の形状を簡略化することを試みて、現実的な時間で計算が終了するように工夫する。 次に、実際に人の頭蓋骨のデータを用いてシミュレーションを行い。人における最適な投与量を予測する予定である。
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Causes of Carryover |
研究を進めるにあたり、先に水素による酵素活性の変化を計測することが有効と考えられたため、追加で実験を行った。それに伴い初年度使用予定であった金額を超えてしまったため、前倒し申請を行った。前倒し申請時には水素濃度測定の追加実験を2018年度におこなう予定であったが、測定用のプローブの購入に時間がかかることが判明したため、行うことができなかった。そのためこの実験を次年度に回したため次年度使用額が発生した。
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Research Products
(1 results)