2018 Fiscal Year Research-status Report
遠隔虚血プレコンディショニングによるmicroRNAを介した心筋保護の機序解明
Project/Area Number |
18K15869
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Research Institution | Kawasaki College of Allied Health Professions |
Principal Investigator |
大野 佑子 川崎医療短期大学, 臨床検査科, 助教 (70813872)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エクソソーム / microRNA / RIPC |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は虚血再灌流障害に対する遠隔虚血プレコンディショニング(Remote ischemic preconditioning:RIPC)による心筋保護の機序を明らかにすることである。特に、体液性経路の中でもエクソソームに着目し、エクソソームの量的・質的変化、エクソソーム内のmicroRANネットワークの関与を解明する。 実際にマウスの血清からエクソソームの分離を行い、western blottingにて確認した。さらにマイクロアレイを用いて、RIPC施行前後のラット由来エクソソーム内のmicroRNA発現プロファイルの比較、クラスター解析を行った。その結果をもとに抽出したmicroRNAを用いて、虚血心筋細胞の保護に効果がみられるかどうか、検討中である。また、マウスにおいてRIPCの前後で心臓で変化するmRNAのアレイ解析を行い、ターゲットと予測される遺伝子についてmRNAのアレイデータと照合して、発現関係がmicroRNAとmRNAで逆となっている遺伝子候補をピックアップしている。 この抽出したmicroRNAに心筋保護の効果が認められれば、心筋虚血再灌流モデルラットでの候補マイクロRNA導入による治療効果の検討に移行予定であり、その結果は虚血性心疾患の治療後の虚血再灌流障害に対して、従来の個々の遺伝子をターゲットとした治療戦略にも応用できるだけでなく、microRNAをターゲットとした新しい治療戦略を提供できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究実施計画において、3段階に分けて計画を立てているが、①ヒト、ラットを用いてRIPCを行い、その前後で採血し、血清内のエクソソーム-microRNAを抽出し、アレイ解析、クラスター解析を行う②ラットRIPC前後の心臓内のmRNAのアレイ解析を行い、この両者の結果からmicroRNAにより制御される遺伝子ネットワークを解明するという2段階までの研究計画にはすでに着手済みであり、その結果を持ちいて、③上記で解明したmicroRNAを心筋に導入し、再灌流心筋障害に対する影響をin vitro(ラット心筋梗塞モデル)にて検討する。Nanoparticleを用いた新規治療戦略の基盤となる実験を行う三段階目の研究計画に着手できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の抽出したmicroRNAを用いて、虚血心筋細胞の保護に効果がみられるかどうかの結果が良好であれば、最終段階の研究に着手する。まず、ラットの左前下行枝を短時間結紮し、その後開放して虚血再灌流障害による心筋障害を誘導させる。RIPC後に採取したエクソソームを、この心筋虚血再灌流障害モデルのマウスに投与し、エクソソームが与える心筋障害への影響を検討する。その後、検討を行ったmicroRNAのmicroRNA mimicを用いて目的のmicroRNAの関与を証明する。またmicroRNA inhibitorでターゲットmicroRNAの活性を阻害し、前の実験で見られた心筋保護の効果が抑制されるか確認する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はラットを使用した実験に着手できておらず、使用額が少なくなった。次年度にはラットを使用した実験の他、マイクロアレイの解析を複数回行う予定であり、外注に多額の費用が発生するため、次年度分として請求させていただきたい。
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